ティラノサウルスは温血、トリケラトプスは冷血
恐竜には大きく分けて、「竜盤類(saurischians)」と「鳥盤類(ornithischians)」の2グループあります。
竜盤類はさらに、竜脚形類(ブラキオサウルスのような首長の巨大草食種)と獣脚類(ティラノサウルスやヴェロキラプトルなどの肉食種)に分かれます。
鳥盤類には、角竜類(トリケラトプス)・剣竜類(ステゴサウルス)・鎧竜類(アンキロサウルス)など、多様な草食種が含まれます。
このうち、竜盤類は一様に代謝率が高く、常に一定の体温を維持した「温血動物」である結果が示されました。
獣脚類の子孫が今日の鳥類であることを踏まえると、ティラノサウルスが温血であったことも納得できます。
問題は、ブラキオサウルスなど巨大な身体を持つ草食種であった竜脚形類の方です。
巨大な草食種が一定の体温を常に維持しようとすると、莫大な食料と巨大な心臓が必要になります。
このような莫大なコストを掛けてでも、彼らが温血を選ぶ合理的な理由はあまり思い浮かびません。
ただ一方で、莫大なコストを掛けた体温維持機能がなくとも、彼らは「運動熱や腸内菌の発酵熱、日光の熱を体内に蓄えるだけで体温をほぼ一定に保てた」とする、今回の結果を支持する意見もあります。
「むしろ、どうやって体熱を逃すかの方が、彼らにとって問題だったでしょう」とウィーマン氏は指摘します。
そして、鳥盤類は全体的に代謝率が低く、冷血動物であった可能性が示されました。
中型の草食種である鳥盤類は、今日のトカゲやリクガメのように、外気温に依存して体温を調節していたと考えられます。
トリケラトプスやステゴサウルスは、寒い時期になると、なるべく暖かい地域へ移動したのかもしれません。
まとめ
本研究の成果は、絶滅した恐竜の生活について理解を深めるだけでなく、現代の動物たちが気候変動にどう対応するかを知る助けにもなるでしょう。
ウィーマン氏はこう述べています。
「私たちは今、第6の大量絶滅の時代に直面しているのです。
そのため、絶滅した動物が、過去の気候変動に対して生理的にどう反応したかを理解することが重要となります。
そうすれば、現存する生物種の保全に役立ち、私たちの今後の行動を変えるきっかけにもなるはずです」