高温で精子ができなくなるメカニズムが判明! 数℃変化でもアウト
高温で精子ができなくなるメカニズムが判明! 数℃変化でもアウト / Credit:Cnva . ナゾロジー編集部
biology

高温で精子ができなくなるメカニズムとは?数℃の変化でもアウト (3/3)

2022.05.27 00:00:00 Friday

前ページ精子を作る過程では正常なDNAがブツ切りにされている

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わずか1~2℃の温度変化でも精子生産は妨害される

精巣の温度が1~2℃上がるだけでも精子の成熟が邪魔される
精巣の温度が1~2℃上がるだけでも精子の成熟が邪魔される / Credit:高温で精子が作られないメカニズムの解明に向けて前進 . 熊本大学

この研究により、わずかな温度変化で精子形成に必要な細胞分裂(減数分裂)に異常が起こることが示されました。

正常な精子形成が34℃で問題なく進む一方で、わずか数度上昇して37~38℃になるだけで染色体異常が発生し、精子になる前に細胞死(アポトーシス)を起こしていました。

温度による妨害は他の過程でも起きており、1~2℃高いだけの35~36℃でも丸い精子細胞が尻尾のはえた精子になるための成熟が妨害されました。

これらの結果は、精子形成過程のほぼ全域にわたり高温を避ける必要があることを示します。

研究者たちは、熱による減数分裂の失敗がどのような分子によって引き起こされていくかを調ることができれば、精子形成が低温で起こる根本的な理由や、男性の不妊治療に役立つと述べています。

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高温で精子ができなくなるメカニズムとは?数℃の変化でもアウト (3/3)のコメント

ゲスト

サウナってやっぱ良くないのかな

ゲスト

哺乳類の多くは精巣の温度を低く保つために、体表から突き出ている袋状の陰嚢に精巣を収める事で、体温の影響を抑制し、外気等で精巣を冷却しています。
 しかし、体内で積極的に熱を生みだす内温動物の中にも陰嚢を持たないものがあり、ゾウ、カバ、サイ、ハリネズミ、モグラ、カイギュウ、センザンコウ、アリイ、ナマケモノ、クジラ、及び鳥類には陰嚢が無く、精巣は胎内に位置している事が知られています。
 この内、クジラの類に関しては、ヒレなどにおいて体外の海水で冷やされた血液が心臓へ戻る途中で、精巣へと向かう動脈血と熱交換を行う事で、精巣に供給される血流の温度を下げ、精巣自体の温度を低く保つようになっているため、精巣が胎内に位置していても高温の問題は生じません。
 一方、ゾウの精巣温度は深部体温と同じ38℃以上に達しているものの、精子の形成に悪影響が無い事が確認されています。
 鳥類に関しても、精巣が肺に繋がる気囊内を通る空気によって冷却されているとする説を唱える人が一部にはあるものの、ニホンウズラの腹腔内にマイクロチップを外科的に埋め込んで行われた実測では、腹腔内の平均温度が42.5℃であったのに対し、精巣の平均温度は42.0℃とわずかな差しかなく、(少なくともニホンウズラに関しては)精巣は高温である事が確認されています。

 これらのように、精子自体やその形成過程は、必ずしも熱に弱いものとは限っているわけではありません。
 この点に関して、「哺乳類の中で陰嚢を持たないグループが、単孔類と、異節類とアフリカ獣上目である」のに対し「陰嚢を持つグループは北方真獣類と有袋類に限られている事」、「陰嚢を持つグループの内、有袋類と北方真獣類では陰嚢の形成過程が異なる事から、陰嚢の進化は複数系統であり、哺乳類は元々陰嚢を持たなかったものから始まって、後に一部のグループが各々独自に陰嚢を進化させたという可能性がある事」等から、「精子やその形成過程は元々は熱に弱くはなかったものの、北方真獣類や有袋類等に限っては、進化の過程で精子の耐熱性が失われたため、陰嚢を発達させざるを得なかったという可能性がある」という説を唱えている人もいるようです。

    鈴木

    ヨーロッパ・アジア系統の獣類の複数の目で広く、陰嚢がみられるということを精子形成上の制約とだけとらえると、体型の大型・小型、平時体温の高低、行動上の活動量、高緯度から低緯度までの気候帯で、固持されている理由として弱く感じます。副腎髄質ホルモンや交感神経活動亢進時は挙上することから、体の弱点を曝さない選択もありそうです。
    なぜなに物語ですが、自然選択の究極要因的な積極的理由をひねってみます。
    精子はスタミナがないので、効率よくメスの生殖器を遡って卵子にたどり着く必要があります。射精された精子はメスの熱い体温を感受して泳ぎ出すのが効率的です。とりわけ雄間で精子競争がある場合、メスの体温で運動のスイッチが入る割合の高い精子を有するほど受精チャンスがあがります。温度による減数分裂の制約は、究極要因的な運動開始の性質を担保するための、雄固体内での精子の選抜として定着してきた。でストーリーはどうでしょう

    ゲスト

    獣類の複数の目で広く、陰嚢がみられるということの理由を精子の運動のスイッチに求めるのは無理があります。
     確かに、アメリカのワシントン大学セントルイス校医学部の研究により、マウスの精子はマウスの体温程度の温度で運動が活性化する事が報告されてはいます。
     しかしその研究によると、精子の運動を活性化させるスイッチが入し始める温度閾値はマウスの精巣の通常の温度とほぼ同じ33.5℃であり、ちょっとした体温の変動で雄の体内においても温度スイッチが入ってしまうおそれがあります。
     同研究では、そのようなフライングによる活性化を防ぐ仕組みも調べ、精液に含まれている「スペルミン」という成分が精子の温度スイッチをロックして働かないようにしている事を明らかにしています。
     雌の体内では、子宮や卵管内を満たしている液体により精液が希釈され、スペルミンの濃度が低下する事によってロックが外れるため、雌の体内で精子の運動が活性化するわけです。
     つまり、温度スイッチ自体は存在してはいるものの、それは雌の体内に入ったかどうかを感知するセンサーとしての働きの役に立ってはおらず、実際にセンサーの働きをしているのはスペルミンの濃度低下によって外れるロック機構の方なのです。
     そして、スペルミンによるロック機構の存在がある以上、たとえ精巣の温度が高かったとしても精子の運動は活性化しませんから、精子の運動を活性化させないという点では、精巣が体内で高温になっていようと、陰嚢で冷却されていようと、どちらでも構わない事になりますから、「精子の運動の不活性化」のためには陰嚢は必要無いという事になりますので、精子の運動のスイッチの話は陰嚢や精巣の冷却とは無関係であると考えられます。

    鈴木

    ご教示ありがとうございます。

    「2025/12/21 20:47:12」の投稿を読むにつけ、北方真獣類で新たに形質が発達し、高体温の小型獣類や低体温の大型獣類に渡って広く保存されているには(そして一部の獣類では陰嚢が形成されないのは)、祖先形質の制約の継承だけではない、繁殖上の有利さがあってしかるべきのように思えます。腹腔の底が破れていることによるヘルニアのリスク、敵襲や(「じゃりン子チエ」のアントニオは作り話だが)オス間闘争で睾丸を痛めるリスク、また、細胞内でハウスキーピングを担っている酵素群も体温前後で最も効率がでるでしょうから、それよりやや低い陰嚢内ではより多く産生する負担もありましょう。対抗流のしくみなく腹腔に冷たい静脈血を流し込んでくるのもポジティブな話ではなさそうです。
    「卵子に到達しやすい活きのよい精子や効率的に卵子に到達できる精子」など直接のメリットを考えたいです。

    ゲスト

    既に

    >スペルミンによるロック機構の存在がある以上、たとえ精巣の温度が高かったとしても精子の運動は活性化しませんから
    (中略)
    >精子の運動のスイッチの話は陰嚢や精巣の冷却とは無関係であると考えられます

    という事を明らにしているというのに、何故未だに「卵子に到達しやすい活きのよい精子」の話に拘るのか理解に苦しみます。
     たとえスペルミンによるロック機構が無かったとしても、哺乳類が外温性である爬虫類から進化した系統である以上、爬虫類から受け継いだ「精子外に含まれるカリウムイオン、重炭酸イオン、カルシウムイオン、亜鉛イオンなどの各種イオン の濃度変化を始めとする化学物質的な環境による活性化」等の、体温によらずに精子を活性化する術も当然存在しているわけであり、些細な体温の変動によってフライングしかねない温度変化による活性化スイッチの必要性は薄く、むしろデメリットになるおそれも少なくありません。
     また、「速く泳げる精子」が必ずしも「正常な精子」であるとは限らず、「何らかの異常の存在により、必要以上に活性化してしまう」という場合も考えられなくもありませんし、「泳ぐ速度が速いだけで、泳ぐ速度とは関係の無い部分の遺伝子に変異を抱えている精子」というものも十分考えられます。
     他にも活発化すれば残りの寿命が短くなりますから、射精と卵巣の排卵との間に時間差がある場合等には卵子と出会う前に精子の寿命が尽きる確率を増す事になり、必要以上の活性化はむしろ精子が卵子と出会う確率を低下させてしまう事になります。
     従って、「精子が速く泳げるようになる」事を直接のメリットと見做すのは、説として弱いもののように思えます。

     直接のメリットを問題にされるのであれば、記事にもあるように、過剰なDSBを抑制してDNAの修復システムの負担を軽減する事で、正常な精子を効率的に増殖させるという、確たるメリットが存在しているのですから、それを「理由として弱い」と見做して「『別の理由を求める』理由とする論」の方こそ「理由として弱い」もののように思えます。

    ゲスト

    ヨーロッパ・アジア系統の獣類の複数の目で広く、陰嚢がみられるということをメスの体温で運動のスイッチが入る割合の高い精子を有するほど受精チャンスがあがるからだとらえると、体型の大型・小型、平時体温の高低、行動上の活動量、高緯度から低緯度までの気候帯で、固持されている理由として弱く感じます。副腎髄質ホルモンや交感神経活動亢進時は挙上することから、体の弱点を曝さない選択もありそうです。

     「ヨーロッパ・アジア系統の獣類の複数の目で広く、陰嚢がみられる」ことを問題視するなら、「『ヨーロッパ・アジア系統の獣類の複数の目で広く、陰嚢がみられる』理由を『温度によって何らかの影響を受ける』ことに求めるあらゆる説」を疑問視しなければならないことになるから、どんな代案を出そうとブーメランにしかならないんだよなあ……
     まあコメ主が「唱えている人もいる」と主張している説の場合は「精子の耐熱性が失われた」としているらしいので、Dolloの不可逆則が「精子の耐熱性が無い(=陰嚢を持たざるを得ない)ことが固持されている理由」にはなるだろうけど。

ゲスト

卵子のDSBは高温でも問題ないの?

    ゲスト

    なるほど。卵子でもその形成過程においてDSBが起きているのにもかかわらず、卵巣は高温の胎内に位置しているという事は、「DSBの修復が熱に弱い」とは限らない事を意味する事になるから、精子やその形成過程が熱に弱い原因をDSBに求める説には疑問符が付きますね。

ゲスト

魚や両生類を見ても明らかなように、進化の過程では精巣が体内にあるのが元々でしょうから、そこから敢えて体外に出したり体内でも入念に冷却機能を付けたりしている種までいるのは間違いなく理由があるでしょうね。

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