倫理的な問題のため実際の殺害数の比較は行われていない
今回の研究により、妊娠中および授乳中の母マウスの発する「バナナの香り(酢酸アミン)」が、オスマウスに子殺しを留まらせる警告手段として使われている可能性が示されました。
人間にとって「バナナの香り(酢酸アミン)」は食欲を刺激されるだけですが、オスマウスにとっては戦いの見込みを誘発する強いストレス源になっていたのです。
また「バナナの香り(酢酸アミン)」による警告効果は、交尾経験がなく子殺しの動機が強い童貞マウスで最も高くあらわれることも判明します。
これまでの研究によってオスからメスへの尿を介したメッセージ伝達は多く確認されているものの、メスからオスへの伝達はほとんど知られていません。
研究者たちは今回発見された効果を見落としていた場合、ストレス実験などに致命的な精度のズレを起こす可能性があると警告しています。
最悪の場合、既存の全てのマウスを使ったストレス実験をやり直す必要があるかもしれません。
もしマウスのストレスにかかわる研究をしている場合、今後は妊娠中や授乳中の母マウスはオスから隔離しておくべきでしょう。
ただ、今回の研究では倫理的な問題のために「バナナの香り(酢酸アミル)」を嗅がせる前後で、オスマウスの殺害数がどのように変化するかが実際に調べられることはありませんでした。
そのため最終的な結論に至るには、脳神経の活動分析などを介した別のアプローチが必要になるでしょう。
もし人間にも同じ児童虐待防止の仕組みがあった場合、虐待防止のためのアロマなどが開発されるかもしれませんね。