拒食症による脳縮小は、ほかの精神疾患より2〜4倍大きい
摂食障害は、若い女性に多く見られる疾患で、日本国内では、拒食症・過食症を合わせ、約22万人の患者がいると推定されています。
また、研究主任のエスター・ウォルトン(Esther Walton)氏によると 、イギリスでは、拒食症だけで16歳以上の約25万人が罹患しているという。
そして、患者のほとんどは10代・20代の女性です。
そこで研究チームは、22カ所の異なる地域から集めた計1648人の女性の脳スキャン画像を分析。
このうち、健常者は963人、AN患者は685人です。
両グループを比較した結果、AN患者では、健常者に比べ、「皮質の厚さ・皮質下の体積・皮質の表面積」の3点で大幅な減少が発見されました。
つまり、脳全体のサイズが縮小していたのです。
しかも、ここで示された脳サイズの減少率は、うつ病・ADHD(注意欠如・多動症)・OCD(強迫性障害)など、他の精神疾患によって引き起こされる減少率よりも2~4倍大きいことがわかりました。
これは、拒食症が脳に与える影響が、予想以上に大きいことを示します。
本研究は、脳縮小を引き起こした原因の特定までは至っていませんが、ウォルトン氏は「ボディマス指数(BMI)の減少や栄養の摂取量の制限が、脳サイズに影響している可能性が高い」と述べています。
適切な治療により、脳は回復することが判明
その一方で、今回の結果には、希望の兆しも見られました。
というのも、摂食療法を受けていたり、すでに回復に向かっているAN患者では、脳の縮小があまり目立たないレベルになっていたからです。
これは、治療次第で、脳のサイズ変化をネガティブな方からポジティブな方へと逆転させられることを示唆します。
ウォルトン氏は「摂食障害による脳の縮小は恒久的なものではなく、早期の適切な治療によって、脳を回復させることは可能でしょう」と話しました。
摂食障害が発症し定着する理由は、まだよくわかっていませんが、それが脳や身体に及ぼす影響については、かなり多くのことが明らかになってきています。
今後、より多くの研究データが得られれば、AN患者の脳縮小の原因や、その背後にある神経学的メカニズムをより正確に理解できるようになるでしょう。