ペンギンはどのように進化してきたのか?
ペンギンの最古の祖先とされる「クポウポウ・スティルウェリ(Kupoupou stilwelli)」は、恐竜が絶滅した直後の6000万年以上前に生息していました。
このときにはすでに、飛行能力を失くしており、遊泳や潜水に有利なボディプランを進化させています。
しかし、現代のペンギンにつながる最後の共通祖先は、もっと後の時代に出現しました。
これまでの研究によると、その共通祖先は約2400万年前に存在したと言われていますが、今回の研究結果は、ペンギンの進化をかなり後に押しやっています。
研究チームが、現生種の遺伝子サンプルと化石データを比較分析した結果、現代のペンギンの共通祖先は、約1400万年前に出現したことがわかったのです。
この時期は「中新世気候遷移(mMCT)」と呼ばれており、多くの二酸化炭素が深海に固定されたことで、世界の気温が17℃も低下しました。
そのため、ペンギンの祖先に、寒い環境にすばやく適応するための進化圧がかかったと見られます。
この時点で、ペンギンは現在のニュージーランドから南米や南極大陸に拡大していました。
mMCTの時代に氷床が拡大し、新しい海流が形成されると、ペンギンはその後、オーストラリアやアフリカにも広がっています。
しかし、ゲノムおよび化石データを見ると、ここからペンギンの進化は長い停滞期に入ることがわかりました。
約1000万年もの間、目新しい進化はしておらず、今世界に現生する18種のペンギンが出現したのは、過去300万年以内の出来事だったのです。
この急速な種分化について、研究チームは「最終氷期(約7万〜1万年前)に至るまでの、あるいは、それに続く急な気候変動が原因で、一時的に進化スピードが速まったのだろう」と指摘します。
その後の進化スピードはまたピタリと止まり、現在に至っています。
そして、約6000万年前から続くペンギンの系統進化を概観すると、その進化速度は現代に近づくにつれて、大幅に低下していることが示されました。
研究主任のダニエル・クセプカ(Daniel Ksepka)氏は「ペンギンの進化が、これほどまで減速した理由は、鳥類にしては大きな体や繁殖の遅さが関係しているかもしれないが、まだ解明されていない」と話します。
歴史的に見ると、ペンギンは急な気候変動が起こったときに迅速な適応を遂げていたようです、現代に至る進化速度の低下を見ると、近年の急速な気候変動には追いつかない可能性があります。
では実際に、ペンギンは今、どれくらい崖っぷちに立たされているのでしょうか?