2050年までにコウテイペンギンの7割が消える?
南極は今、温暖化にともない急速に変化しており、とくに西部の氷床は「世界で最も温暖化が進んでいる地域」の一つに指定されています。
同地は、1957年から2006年にかけて、10年間ごとに約0.2⁰Cと、他の大陸の約2倍の速度で温暖化したと言われています。
また、気温の上昇により、氷床の融解速度も速くなりました。
南極のスウェイツ氷河は、すでに世界の海面上昇の約4%を占めており、2030年までには崩れ始めると予測されています。
氷河全体が崩壊した場合、海面が世界で約65cm以上も上昇し、モルディブ、セーシェル、ハワイの一部など、低地の島々が水没の危機に瀕するでしょう。
その影響は、当然ながら南極を中心に生息するペンギンたちにも及びます。
ペンギンは繁殖や休息、換毛のために海氷を利用するため、氷の喪失は、ペンギンの生活そのものを脅かします。
そして、現代の気候変動はあまりに速すぎて、進化速度の落ちているペンギンでは適応しきれない可能性が高いのです。
クセプカ氏は、こう話します。
「ペンギンには、何万年、何百万年という時間スケールで変化する気候に適応する能力は備わっています。しかし、私たちは今、前例のない速さの地球温暖化に直面しているのです。
もし南極の氷床が急速に融解してしまえば、ペンギンが新しい環境に適応して進化するのに十分な時間はないでしょう」
専門家によると、現在の温暖化のスピードでは、最大種であるコウテイペンギンは、2050年までにコロニーの約70%が全滅すると予測されています。
何千万年も生き続け、幾度となく気候変動を乗り越えてきたペンギンですが、新たな”人新世(Anthropocene)”を生き抜くことができるかどうかはわかりません。
※ 人新世:人類が地球の地質や生態系に与えた悪影響に注目して提案されている、地質時代における現代を含む新たな区分
ペンギンの絶滅を防ぐためにも、人為的な温暖化を抑制しながら、進化スピードの減速についてさらに理解を深める必要があるでしょう。