牛に見守られながらの発掘作業で、化石を大量発見!
化石群が見つかった場所は、グロスタシャー州ストラウド近郊にある農場で、イングリッシュ・ロングホーン(English Longhorn)という牛が放牧されています。
化石のほとんどは、牛舎の裏側に位置するため、発掘は牛に見守られながらの作業となったそうです。
発掘コーディネーターで、同チームのサリー・ホリングワース(Sally Hollingworth)氏は「ロングホーンの群れに見守られながら掘るのは、ちょっと不安でした」と話します。
牛舎裏の発掘は、今月初めの4日間で、横幅80メートルにわたり掘削されました。
サリー氏の夫で、発掘を指揮したバーミンガム大学の地質学者、ネビル・ホリングワース(Neville Hollingworth)氏によると、出土した化石群は、ジュラ紀の前期、とくにトアルシアン(Toarcian)期と呼ばれる、約1億8270万〜1億7410万年前の時代に当たるとのこと。
化石群には、ジュラ紀の古代魚や海洋爬虫類、イカが保存されており、この地域が当時、熱帯の海に覆われていたことを示しています。
このように、ジュラ紀の海の化石群が内陸の場所で見つかるケースは、イギリス国内でも極めて稀です。
中でも一段と目を引いたのは、「パキコルムス(Pachycormus)」というジュラ紀の古代魚の化石でした。
頭部が3次元的に化石化しており、目玉や鱗、ヒレといった軟組織まで、細部にわたり驚くほど良好に保存されています。
ネビル氏は「化石はたいてい2次元的に保存されますが、この魚はまるで岩から飛び出してきたかのように見える」と話します。
この化石のデジタル3Dモデルが、イギリスの3Dメーカー「ThinkSee3D」のスティーヴン・デイ(Steven Dey)氏によって作成され、「Sketchfab」で一般公開されています。
また、これまでのところ、堆積物中からワーム等による中空状の巣穴の痕跡がまったく見つかっていないことから、同地域は急速に埋没したことが示唆されています。そのため、古代魚や爬虫類の死骸が底生動物によって荒らされることなく、良好な状態で大量に保存されたのでしょう。
こうした条件から、まだまだ新規の化石が発掘されると見られます。
そこでチームは、地元の学校やコミュニティが発掘に参加できる、STEM教育の育成プログラムを計画中です。
※ STEM教育:科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の4つの理系分野の向上を目指し、2000年代にアメリカで始められた教育モデルのこと。
チームは今後も同地での発掘作業を続け、その成果を順次、発表していくとのこと。
回収された化石標本の多くは、地元ストラウドにある「ミュージアム・イン・ザ・パーク(Museum in the Park)」に寄贈され、一般向けに展示される予定です。