人工遺伝子回路を設計して、植物の構造を変化させる
人工遺伝子回路を設計して、植物の構造を変化させる / Credit:Jennifer Brophy(Stanford University)_Stanford researchers have designed synthetic genetic circuits that could help plants adapt to pressures from climate change(2022)
biology

人工遺伝子回路の設計により植物の根の構造を変化させることに成功

2022.10.02 Sunday

スマホ、パソコン、テレビなど、ほとんどの電気製品は「論理回路」と呼ばれるデジタル回路で制御されています。

論理回路が備わっているため、私たちの意図通りに電子機器を操作できるのです。

もし、同様の回路を遺伝子の発現にも導入できるなら特徴や成長のタイミングさえ人間の意図通りに操作した植物を作ることもできるでしょう。

そして最近、アメリカ・スタンフォード大学(Stanford University)生物学部に所属するジェニファー・ブロフィ氏ら研究チームは、遺伝子の発現を制御する「人工遺伝子回路」を設計しました。

これを利用することで、シロイヌナズナの根の数だけを変化させることに成功しています。

研究の詳細は、2022年8月11日付の科学誌『Science』に掲載されました。

Stanford researchers have designed synthetic genetic circuits that could help plants adapt to pressures from climate change https://news.stanford.edu/2022/08/11/synthetic-genetic-circuits-help-plants-adapt-climate-change/ Reprogrammable ‘Genetic Circuits’ May Eventually Help Plants Adapt to Climate Change https://www.sciencealert.com/reprogrammable-genetic-circuits-may-eventually-help-plants-adapt-to-climate-change
Synthetic genetic circuits as a means of reprogramming plant roots https://www.science.org/doi/10.1126/science.abo4326

生物にも論理回路を組み込める?

シンプルな論理回路の例。
シンプルな論理回路の例。 / Credit:technologystudent.com

私たちの身の回りの電気製品は、0と1のデジタル信号と論理回路によって制御されています。

例えば、「玄関の自動照明システム」にも論理回路が活用されています。

これによって、「周囲が暗くて人が近づいたときだけ点灯する」など、私たち人間が意図した通りの細かい操作が可能になっています。

生物にも論理回路を導入できる?
生物にも論理回路を導入できる? / Credit:Canva

では、生物版の論理回路をつくってその生物に導入すれば、生物の反応や特性を人間の意図通りに操作できるのでしょうか?

合成生物学の分野では、以前から遺伝子発現を操作する遺伝子ネットワーク「人工遺伝子回路」が研究されています。

遺伝子を電子回路の部品のように組み合わせて、生物に特定の特徴をもたせようとしてきたのです。

実際、原生生物などには既に人工遺伝子回路が導入されてきました。

そして今回、ブロフィ氏ら研究チームは植物の人工遺伝子回路を開発することに成功しました。

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