植物の「人工遺伝子回路」を設計!根の数をコントロールできる
現在の遺伝子組み換え作物は、「除草剤や害虫に抵抗するために必要な遺伝子が全ての細胞で発現する」という比較的単純で大雑把な方法でつくられています。
「特定の細胞の、特定の遺伝子を制御する」ようなことはできないのです。
しかし人工遺伝子回路であれば、より細かな遺伝子制御が可能になり、植物の一部だけを変化させることができます。
今回、ブロフィ氏ら研究チームは、転写に関わる領域を特定・調整することで、人工遺伝子回路を作成。
これをシロイヌナズナに導入し、根の分岐に関する遺伝子発現を制御することに成功しました。
特定の遺伝子の発現量を変化させることで、根の他の性質に影響を与えることなく、側根(主根から枝分かれした根)の数を予測可能な範囲で変化させることができたのです。
この結果は、植物の特性を人間の意図通りに操作するうえで重要な一歩となりました。
実際、根の深さや形状は、植物が土壌から栄養をどのように回収するかに大きく関わってきます。
例えば、浅く広範囲に枝分かれした根はリンの吸収に優れています。
一方、深くまで一直線に伸びて底の方で枝分かれする根は、水や窒素の吸収に優れています。
さまざまな人工遺伝子回路を設計して導入すれば、これらの特性も思い通りに制御できるはずです。
将来的には、洪水や干ばつ、熱波などの気候変動に対して高い抵抗力をもった作物をつくり、世界的な食糧問題にさえアプローチできるかもしれません。