蛾の鼓膜は2種類の異なる厚みによって指向性を発揮する
研究チームは、最初に単純な3Dモデルを作成し、そこから蛾の鼓膜を模倣して徐々に形状を複雑にする、というプロセスを取りました。
これにより、どの構造が音の方向を特定するのに役立っているか見極めることができます。
最初のモデルは単純な円形プレートでしたが、当然ながら、これだけでは音源探知できませんでした。
そしていくつかの要素を追加したり試したりした結果、2種類の異なる厚みをもつ楕円形のプレートが音源探知に効果的だと分かりました。
不均一な厚みの鼓膜構造とそれがもたらす振動により、耳の後ろから聞こえてくる音よりも、耳の前から来る音の方が強く拾われるのです。
音を拾いやすい角度が限定されているので、いくつかの方向に耳を向けて比べるだけで、「より強く聞こえる方向に音源がある」と判断できるでしょう。
つまり仮説どおり、蛾は1つの耳だけでも、鼓膜の構造によって音源探知できると分かりました。
研究チームは、この発見を「新しい指向性マイクの開発」に役立てられると考えています。
従来の指向性音響センサーのほとんどは、人間の耳のように、2つもしくはそれ以上のマイク応答を比較することで機能します。
ところが蛾の鼓膜構造を応用するなら、1つのマイクだけでも指向性が得られるかもしれません。
これまでとは異なった方法で、周囲の雑音を拾わず、特定の音源だけをピックアップするのに役立つのです。
またチームは、この研究が補聴器の開発にも役立つと考えており、「小さな蛾からある種の補聴器を生み出せるのであれば、それは素晴らしいことでです」と、今後の進展に期待しています。