蛾の音源探知が新しい指向性マイクの開発に役立つかも
蛾の音源探知が新しい指向性マイクの開発に役立つかも / Credit:Canva
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蛾の特殊な鼓膜構造を解明! 新しい指向性マイクへの応用も期待!

2022.09.29 Thursday

自動車を運転しているとき、突然パトカーや救急車のサイレンが聞こえてきたら皆さんはどうするでしょうか?

通常、運転手は音が聞こえる方向を確認して、道を譲ろうとするはずです。

こうした行動が取れるのは、人間の耳に音の方向を特定する能力があるためです。

そして小さな蛾は、人間とは異なった方法で音源を探知しています。

今回、イギリス・ストラスクライド大学(University of Strathclyde) 超音波工学センターに所属するララ・ディアス・ガルシア氏ら研究チームは、蛾の鼓膜を模倣した3Dモデルを作成し、蛾が音源探知できる理由を解明しました。

このモデルによって、新しい指向性マイクが開発できるかもしれません。

研究の詳細は、2022年8月17日付の科学誌『IEEE Sensors Journal』に掲載されました。

Will Moths Inspire a New Kind of Microphone? https://spectrum.ieee.org/biomemetics-moth-ear-microphone
Towards a bio-inspired acoustic sensor: Achroia grisella’s ear https://ieeexplore.ieee.org/document/9858635

蛾は人間とは異なった方法で音の方向を特定している

人間は2つの耳で音の方向を特定している
人間は2つの耳で音の方向を特定している / Credit:Canva

人間の耳が音の方向を特定できるのはなぜでしょうか?

それは「耳が2つある」からです。

2つの耳は離れているので、それぞれの耳が受け取る音量やタイミングは僅かに異なります。

例えば右方向に音源がある場合、右耳の方が左耳よりわずかに早く、そして音量も大きく聞こえます。

そして脳は、これら僅かな差を元に音源の方向を推定できるのです。

とはいえ全ての生物が同じ方法で音源探知できるわけではありません。

昆虫などの小さな生物では、耳同士が非常に近いため、「聞こえ方の違い」が生じにくいのです。

実際、「Ascalenia grisella」という小さな蛾は、2つの内耳(耳の最も内側にあたる部分)がわずか0.6mmしか離れていません。

しかしそれにもかかわらず、彼らは音の方向を特定できます。

しかもディアス・ガルシア氏によると、「蛾のメスは片耳が潰れた状態でも、交尾のための鳴き声を追跡できる」とのこと。

つまり、蛾は1つの耳だけでも音源探知できると考えられます。

そこでディアス・ガルシア氏は、蛾の鼓膜を模倣した3Dモデルを開発・シミュレーションすることで、この仮説を検証することにしました。

次ページ蛾の鼓膜は2種類の異なる厚みによって指向性を発揮する

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