蛾は人間とは異なった方法で音の方向を特定している
人間の耳が音の方向を特定できるのはなぜでしょうか?
それは「耳が2つある」からです。
2つの耳は離れているので、それぞれの耳が受け取る音量やタイミングは僅かに異なります。
例えば右方向に音源がある場合、右耳の方が左耳よりわずかに早く、そして音量も大きく聞こえます。
そして脳は、これら僅かな差を元に音源の方向を推定できるのです。
とはいえ全ての生物が同じ方法で音源探知できるわけではありません。
昆虫などの小さな生物では、耳同士が非常に近いため、「聞こえ方の違い」が生じにくいのです。
実際、「Ascalenia grisella」という小さな蛾は、2つの内耳(耳の最も内側にあたる部分)がわずか0.6mmしか離れていません。
しかしそれにもかかわらず、彼らは音の方向を特定できます。
しかもディアス・ガルシア氏によると、「蛾のメスは片耳が潰れた状態でも、交尾のための鳴き声を追跡できる」とのこと。
つまり、蛾は1つの耳だけでも音源探知できると考えられます。
そこでディアス・ガルシア氏は、蛾の鼓膜を模倣した3Dモデルを開発・シミュレーションすることで、この仮説を検証することにしました。