ネコの交流と腸内微生物との関係
ホルモンと一緒に調査されたネコたちの腸内細菌叢は、個体間の触れ合いが多いほど類似していました。
動物が同じ空間で一緒に飼育されると腸内細菌叢が類似することが過去にも報告されています。
さらに霊長類であるヒヒへの調査では個体同士の物理的接触によって腸内細菌が伝染するということが実証されました。
ネコにおいても、ベッドを共有する頻度や臭い嗅ぎ合う頻度が高いほど腸内細菌叢の類似が見られたため、物理的接触による腸内細菌の伝染が起こっているものと考えられます。
腸内微生物が似るとネコの性格も似る?
ネコは集団でいるとき、お互いを舐め合うアログルーミングを行います。
アログルーミングは外分泌物である唾液の交換を伴うため、通常の物理的接触よりも微生物の伝達への影響が大きいはずです。
今回の調査では調査期間が短かった影響などもあり、アログルーミングと腸内細菌叢の類似性に相関は見られませんでしたが、アログルーミングを含むネコ同士の交流はよりいっそう腸内細菌叢を類似させていくに違いありません。
また、近年の研究では腸内細菌が脳機能に影響を与え、行動や性格をも変化させることが報告されています。
テストステロンやコルチゾールが少ないネコたちがこれらのホルモンの影響で他のネコたちと親密に行動することで、腸内細菌の伝達が起こり、脳機能、つまりホルモン分泌に影響を与える可能性があります。
もちろんこれだけではないのでしょうが、最初は仲が悪かったネコたちでも一緒に暮らすうちに徐々に打ち解けていくのは腸内細菌叢の影響があるのかもしれません。
ホルモンや腸内細菌叢から見えたネコならではの「個の社会」
ネコがお互いに毛づくろいをしているようすなどを見るといかにも親密に見えますが、ネコ自身の認識ではあくまで「群れの一員」ではなく「個と個」で、単独行動をするイエネコの縄張りがたまたま重なり合った一場面にすぎません。
しかしそんな「たまたま」の接触が重なると腸内細菌が伝達され腸内細菌叢の類似が高まっていきます。
その影響で、ネコたちの行動も似ていくようになり、より接触が増えていくのです。
多頭飼いで暮らすネコたちはこうした繰り返しで、ネコなりの社会を形成しているのかもしれませんね。