現代人が太りやすくなった3つの要因とは?
カナダ・ヨーク大学(York University)の研究チームは2016年、アメリカの成人男女を対象に、1971〜2008年までの3万6400人の食事データと1988〜2006年までの1万4419人の身体活動データを調査。
そのデータを食事量・運動量・年齢・BMI(ボディマス指数)に応じてグループ分けしました。
その結果、現代と30〜40年前の同年齢の男女では、食事量と運動量が同じでも、必ず現代人の方が体重が重くなることが判明したのです。
たとえば、1988年と2006年のそれぞれで、食事量と運動量が同じ同年齢の男女を比べると、2006年の男女のBMIの方が約2.3ポイント高くなっていました。
つまり、現代人が1980年代の人とまったく同じ食事量と運動量を実践しても、体重は平均して10%ほど重くなるのです。
なぜ食事量と運動量が同じにもかかわらず、現代人の方が重くなるのでしょうか?
これについて研究主任のジェニファー・クク(Jennifer Kuk)氏は、現代人がやせにくい体質になっている3つの可能性を挙げています。
第一に、太りやすさに関連する化学物質にさらされる機会が多くなったことです。
農薬や難燃剤(ゴム・プラスチックといった可燃性の素材に添加して燃えにくくする薬剤)、食品の包装に含まれる化学物質など、ホルモンの働きを変化させ、体重増加を促す可能性のある物質に現代人はさらされやすくなっています。
第二に、1970〜80年代以来、処方箋薬の使用量が劇的に増加したことです。
たとえば、抗うつ剤は現代のアメリカで頻繁に処方される薬であり、その多くが体重増加に関係していると言われています。
そして第三に、マイクロバイオーム(腸内細菌叢)が何らかの形で変化している可能性です。
腸内細菌は心と体の健康を保つための土台であり、これが崩れると肥満やメンタルの不調につながります。
現代人は数十年前と比べて肉やファストフード、嗜好食品の消費量が格段に増え、それに伴って人工甘味料や化学物質もより多く摂取するようになりました。
それから、交通手段やインターネットの発達、デスクワークの普及によって生活習慣も大幅に変わっています。
これらが現代人の太りやすいマイクロバイオームを形成し、親から子へと遺伝して、その組成が蓄積されているのかもしれません。
この研究はアメリカ人のみを対象としたものですが、ここで指摘されていることは現代の日本人にも十分当てはまります。
肥満はなにかと食事の不摂生や生活習慣のだらしなさのせいにされがちです。
しかし、現代の太りやすさの背後には、個々人の責任だけでなく、社会全体の変化が大きな原因として存在するのかもしれません。