巣から旅立ったシロアリたちの一部は同性カップルを作る
上記の写真を見て白くないじゃんと思った人もいるかもしれませんので、最初に今回対象となるヤマトシロアリについて説明します。
シロアリとは別に必ず身体が白い昆虫というわけではありません。ヤマトシロアリの体色は黒色です。
またシロアリは名前にアリと入っていますが、アリの仲間ではなくゴキブリの系統に属する昆虫です。
シロアリと言いつつ、白くもなくアリでもないので注意しましょう。
ただ、シロアリはアリやハチと同じく社会性のある昆虫で王や女王がおり、恋の季節になると巣を飛び立ち結婚相手を探して新しいコロニーを築きます。
結婚相手がみつかったシロアリ(ヤマトシロアリ)たちは、上の図のように、前後(メス前・オス後)に並んで歩くという独特の求愛行動をとりつつ移動します。
このメス前・オス後は非常に息のあった行動であり、もし後ろのオスがはぐれてしまった場合には、メスはちゃんと立ち止まってオスのパートナー待ち、その間にオスは必死に前を歩いていたメスを探し始めます。
ですが以前から、このような前後並びのシロアリカップルの中に、一定数の同性カップルが存在していることが知られていました。
シロアリに限らず生物は稀に同性カップルを作ることが知られています。
その原因に対する有力な説は「性別の誤認」です。
シロアリに限らず、多くの生物は決められた期間の間に相手をみつけなければならないため、焦った一部のおっちょこちょいが「誤って同性同士でカップルになってしまう」と考えられているのです。
しかしシロアリにかんしては前述の通り、カップルになった際メスが前、オスが後になる求愛行動を行うことが知られています。
そのため本来ならば、メス同士のカップルならば互いに先頭に立とうとし、オス同士のカップルならば互いに後ろにつこうとして、上手く前後に並んで移動することが難しいハズです。
にもかかわらず、観察された同性カップルの多くが混乱することなく前後に綺麗にならんでおり、異性カップルと見分けをつけるのは難しくなっていました。
そこで今回、沖縄科学技術大学院大学の研究者たちは、シロアリたちの同性カップルが本当に誤認によるものか、それとも意図的なものであるかを調べることにしました。
実験では前後に連なって歩いている同性カップルの強制的な引きはがしが行われました。
するとメス同士のカップルを引き離した場合、後ろを歩いていたシロアリが前を歩いているハズのパートナーを必死に探す様子が観察されました。
これは典型的なオスの行動特性です。
またオス同士のカップルを引き離した場合には、前を歩いていたほうが立ち止まり、後ろのパートナーを待ちました。
こちらは逆にメスの行動特性です。
次に研究者たちは同性カップルなったシロアリたちが異性を演じなかった場合をシミュレーションで検討することにしました。
すると異性を演じなかった場合、いったん2匹が離れてしまうとカップルが再開する可能性が低下したり、再びカップルになるのに長い時間を要する結果になりました。
つまり、異性を演じ続けない限り、そもそも同性カップルの状態を持続できなかったのです。
これらの結果は、同性カップルとなったシロアリたちはパートナーの性別を誤ってしまっていたのではなく、自ら進んで異性の動きを演じていたことを示します。
しかしそうなると気になるのが、理由です。
なぜ同性カップルとなったシロアリたちは、自ら進んで異性を演じるようになったのでしょうか?