「水切り」をジャガイモみたいな石でも成功させる方法を発見!
水面に石を投げて、跳ね返る回数や距離を競う「水切り」は、世界中のあらゆる場所で世代を超えて楽しまれています。
現在ギネスの世界記録として登録されている最多スキップ数は、2013年にアメリカのカート・スタイナー氏(Kurt Steiner)が記録した88回となっています。
これまでの研究によれば、石をより多くスキップさせるには、丸くて平らな石を回転させながら、水面に対して適度に浅い角度で投げ込むことが重要であることが示されています。
また他の「水切り」の科学的な研究では、円柱・球体・楕円・くさび型などの形状に加えて、水滴など液体が跳ね返るために必要な条件など、さまざまな角度からの検証が行われています。
そこで今回、ブリストル大学の研究者たちは、水切りを1回でも成功させるために必要な物体の条件を予測するための数学モデルの開発を行うことにしました。
結果、1回でもスキップさせるためには、石を投げる速度や角度に加えて、石自体の質量と底側の曲率(曲がり)との関係が重要であることが判明します。
具体的には、スキップに成功した小石よりも8倍重たい石であっても、底側の曲率が小石の4倍大きければ、スキップが発生することなどが数学的に示されました。
つまり、どう考えても水切りに向かないジャガイモのような形状の石であっても、底側の曲がりが急であればスキップが成功する確率が高くなるのです。
また重たい石の場合には、通常の水切りに使われる軽く平べったい石とは異なるメカニズムで跳ね返りを起こすことが判明します。
通常の水切りに使う平べったく丸い石の場合、スキップするかどうかは水上スキーや高速艇と同じく、石と水の相互作用は水の表面的な部分が中心となります。
一方重い石では水との最初の接触でより深く、より長く水の中に押し入ります。
その結果、水圧が石の底側にかかる強さと時間が長くなり、石は盛り上がる水面と共に押し上げられる「超弾性反応」と呼ばれる現象によってスキップを起こしていました。
超弾性とはゴムに代表される優れた柔軟性や大きな変形を起こす材料の特性のことです。
私たちが日常生活で接する水から弾性を感じることは稀ですが、大きな力が加わるとゴムのように反発することがあります。
研究者たちは「重い石を使うと水のゴム的な特性(超弾性的な反応)が発揮され、1回の大きな跳躍(メガバウンド)が発生する」と述べています。
最低限1回の跳躍が起こる条件を探索した本研究は、水切りの競技性や遊びとしての側面を重視している人々にとっては、あまり役に立たないように思えるかもしれません。
しかし研究者たちは、「数学的モデルを利用することで、飛行機の翼に氷が付着する現象など、石と水以外のさまざまな物体同士の衝突を理解するうえで役立つ知見だ」と述べています。
この場合、石の役割をするのは氷の結晶であり、水の役割をするのが飛行機の翼の表面となります。
もし今度、川辺や湖畔で遊ぶことがあったら、ジャガイモみたいな石で水切りを試してみるのもいいでしょう。
上手く投げることができれば、通常の水切りではありえない、意外な高さまで石が水面から跳ね返る様子がみられるかもしれません。