飲酒運転の根絶に音声識別AIが役立つかも
日本の警察庁によると、2021年の飲酒運転による交通事故は2198件でした。
飲酒運転の厳罰化以降、事故件数は大幅に減っていますが、根絶には至っていません。
現在では呼気検査による血中アルコール濃度(BAC)の測定が一般的ですが、高性能なアルコールチェッカーほど高価であり、ものによっては数万~数十万円するケースもあります。
(日本の警察が取り締まりで使用している検知器のデータは公開されていません)
またデバイスをいつも持ち歩いて、相手に息を吐きかけてもらう必要もあります。
そのため従来の取り締まり方には、さまざまな制限が伴います。
もっと手軽な方法が浸透すれば、飲酒運転をより抑制できるはずです。
この課題は世界共通でしょう。
そこでボネラ氏ら研究チームは、音声だけで飲酒の有無を判断できるAIアルゴリズムを開発することにしました。
彼らは飲酒した人とそうでない人の1万2360パターンの音声データを使用し、飲酒状態の音声の特徴をAI学習させたのです。
これによって開発された深層学習アルゴリズム「ADLAIA」は、12秒間の録音した音声データから、その人が飲酒しているか・していないかを判断できるようになりました。
テストでは、飲酒状態(血中アルコール濃度0.05%以上)をほぼ70%の精度で識別することに成功。
この血中濃度は、ほろ酔い期(ビール中瓶1~2本程度)に該当します。
また血中アルコール濃度0.12%(酩酊初期:ビール中瓶3本程度)以上のケースでは、約76%という高い精度で識別することに成功しました。
研究チームは、ADLAIAの性能を向上させてモバイルアプリ化することで、さまざまな状況でのアルコールチェックが可能になると考えています。
ちなみに日本の道路交通法では、呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上で「酒気帯び運転」です。
この数値は血中アルコール濃度に換算すると0.03%になります。
テストされた数値よりやや低いですが、それでもADLAIAは飲酒運転を取り締まるのに日本でも役立つかもしれません。
音声マイクは今やさまざまなデバイスに含まれています。
本格的に実装されればスマホを使って即座に検査することも可能になるでしょう。
また車の音声入力システム(カーナビなど)にADLAIAを入れておけば、飲酒運転を未然に防止できるかもしれません。
さらにドライブスルーなど、運転中のドライバーが音声マイクに話しかけるタイミングは、街中でいくつもあります。
これらすべてが監視として働けば、飲酒運転を根絶することは簡単かもしれません。
まだ研究段階の技術ため検出精度は実用化に不十分ですが、歩行者やドライバーの大切な命を守るためにも、飲酒判定AI「ADLAIA」の今後の進展に期待したいものです。