「液体窓」はイカのように色や特性を変化させる
研究チームは、イカの皮膚に着想を得ました。
イカは透明になったり様々な色に変化したりすることでよく知られています。
この変化は、イカがもつ「層状の皮膚」によって生じています。
「光の吸収を制御する器官」や「反射や虹彩に影響を与える器官」などが積み重なっており、互いに連携し、複合的に作用することでユニークな光学的特性を示すのです。
研究チームは、この構造に似せた複数の層からなる「液体窓(Liquid windows)」を開発しました。
これは、厚さ数ミリのプラスチックシートが複数重なったものです。
それぞれの層には、液体を送り込むための経路が内蔵されており、層ごとに別々の光学特性をもった液体を注入したり排出したりできるようになっています。
これにより、「赤外線」「可視光線」のそれぞれを選択的に通過させたりカットしたりできます。
また光を拡散させる液体の出し入れにより、部屋の明るさをコントロールできます。
これらを自由に組み合わせることで、部屋を明るく保ちながら、冬は暖かく、夏は涼しく調整できるのです。
そしてチームは、「壁の一面(南面)全体を液体窓に置き換えた架空の建物」のコンピュータモデルを作成し、エネルギー消費量をシミュレートしました。
その結果、「赤外線を調節するだけで、建物で使用する暖房・冷房・照明の年間エネルギーを約25%削減できる」と述べています。
さらに「赤外線と可視光線の両方を調節するなら、50%以上の節約になる」とも主張しました。
驚異的な数字ですが、現実のほとんどの建物では窓の総面積が小さいため、節電効果も控えめなものとなるでしょう。
ちなみに、液体窓のそれぞれの液体に色を付けるなら、瞬時に変化するカラフル窓になります。
気分に合わせて窓の色を変えたり、いつもの透明な窓に戻したりできるでしょう。
見た目と特性を柔軟に変化させられる液体窓は、まだ試作の段階です。今後の研究と改良で製品化に至ることを期待したいものです。