甘くて栄養バランスが良くて美容にも良いとされる「バナナ」。スーパーに行けば簡単に見つけられますが、実は何度も絶滅の危機にさらされているのです。ここ数年でも、「新パナマ病」がフィリピンで流行して絶滅が噂されていました。
そもそも、昔のバナナは硬くて黒い種だらけで、とても食べれたものではありませんでした。その後、突然変異によって種のないバナナが誕生します。突如として現れたこの「種なしバナナ」によって、私たちは現在当たり前のようにバナナのある生活を享受できているのです。
しかしそんな種なしバナナは、子孫を残すための「種」がないわけですから、もちろん繁殖することができません。そこで「株分け」という、根っこを含めた木の一部を別の場所に移すことで繁殖させます。
株分けで増えていった種なしバナナですが、絶滅の危機に瀕してしまったバナナもあります。1900年代初めから、大きくてクリーミーな美味しいバナナとして市場に流通した「グロス・ミッチェル」という品種です。人気のバナナとして流通が盛んでしたが、1950年代に悲劇に見舞われます。
「パナマ病」と呼ばれる、バナナの水分や養分を供給する部分を破壊して、木が枯らしてしまう病気が世界中に広まったのです。これにより、グロス・ミッチェル市場は大打撃を受けます。「バナナ絶滅」が現実味を帯びた瞬間でした。しかし、すぐに抵抗力のある「キャベンディッシュ」と呼ばれる種が発見されます。そして、現在ではこのキャベンディッシュという種が世界で生産されるバナナの大半を占めています。
しかし、そんなキャベンディッシュも最強ではありません。種なしバナナは株分けで繁殖するために、遺伝的多様性がなく、病気に対する新たな抵抗力を身につけることができません。1990年代には「新パナマ病」と呼ばれるものが見つかり、キャベンディッシュにも感染してして枯れさせてしまうことが確認されています。
現在もキャベンディッシュの絶滅が危惧されています。さらに、キャベンディッシュが絶滅してしまった後の後継者となるような「味」や「流通性」や「成長能力」を持ち合わせているバナナが今のところはありません。キャベンディッシュが絶滅の危機に瀕してしまえば、バナナの価格は高騰し、高級果物として扱われることになるでしょう。
科学者は、バナナが根絶やしにならないように種なしバナナと種ありバナナを交配させて新たな種を作ろうとしています。しかし、交配させた中で種ができるのは100万本に3粒と非常に少量しか取れません。
私たちの食卓を守るためにも、キャベンディッシュをすべての要素で上回るような「スーパー・バナナ」の登場が待ち望まれます。
via: ScienceAlert, Dole / translated & text by ヨッシー
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