動物は「懐かしい匂い」で昔の記憶を思い起こす
匂いで昔を思い出すことはよくあるものです。
例えば、「数年ぶりの帰省で、実家の匂いを嗅いだ瞬間に昔の記憶が蘇った」という経験を持つ人も多いでしょう。
これは私たち人間の脳が何年も前の情報を記憶していること、そしてその匂いが記憶を呼び起こすことを意味しています。
同様の現象は、人間だけでなく動物でも生じることが分かっています。
例えば、過去の研究ではゴールデンハムスターやハタネズミが匂いで親族を判別できると報告されました。
またニュースで取り上げられる動物の「感動の再会シーン」からも、長期記憶と匂いの関連性を知ることができます。
とはいえこれらは、「本人の匂い」を直接嗅いだ時の反応です。
本人が不在だったとしても、「本人と関連のあるもの」であれば、その匂いから昔の記憶を呼び起こすことはできるのでしょうか?
研究チームはこの疑問について、長年離れ離れで生活してきたアフリカゾウの母娘で調査したいと考えました。
アフリカゾウは長期記憶に優れていることでよく知られていますが、科学的には、最大1年間の嗅覚記憶しか証明されていません。
そこでチームは、アフリカゾウの糞の匂いだけで、どれだけ昔の記憶を呼び起こせるか実験しました。