アフリカゾウは12年前の「親族の糞の匂い」を嗅ぎ分けて興奮する
実験に参加したのは、ドイツの動物園のアフリカゾウ母娘2組です。
このゾウの母娘については1組が2年間、もう1組は12年間も離れ離れで暮らしてきました。
この長期間離れ離れになっていた母娘の再会前に、研究チームはそれぞれの糞便サンプルを収集。
実験では、関係ないゾウの糞と親族の糞の匂いを嗅いだときのゾウの反応を比較しました。
4頭のゾウそれぞれに、①一緒に生活していない親族の糞、②同じ動物園で一緒に生活している非親族の糞、③一緒に生活していない非親族の糞を嗅がせて、反応の違いを調べたのです。
その結果、ゾウたちは、②や③の「非親族の糞」を嗅いでも無反応のまますぐに立ち去りました。
対照的に、①の離れ離れになっていた「親族の糞」では、繰り返しその糞を嗅ぎ、耳をパタパタと動かしたり、鳴き声を上げたりしました。
親族の糞だけに、明らかな興奮や精神的な作用が認められたのです。
動画のはしゃぐ様子からは、ゾウの単なる記憶力の良さだけでなく母娘の絆の深さも感じ取れます。
研究チームによると、これらの反応は「ポジティブな感情に関係している」ようです。
そしてアフリカゾウが親族の糞の匂いを覚えている証拠だと考えています。
アフリカゾウは最長12年間も親族の糞の嗅覚記憶を保持しており、匂いの違いを嗅ぎ分け、興奮したのです。
また実験では、母娘の両方で反応が見られましたが、母親の方がより強い反応を示しました。
「母親が抱く子供に対する思い」は、「子供が母親に抱く思い」よりも強いのかもしれませんね。
こうしたゾウの優れた記憶力は、群れが分裂したり、ときに再集合したりする独特の生態にも役立つと言えます。
そして私たち人間と同じように、ゾウたちは懐かしい匂いを嗅ぐことで、はるか昔の家族の記憶を思い出しており、再会の時を待ち遠しく感じているのです。