頭に被るだけで機能する脳波コントロールシステム
人間の頭は意外と複雑な形状をしているため、脳波を読み取るセンサーは分厚く硬いものだとうまく機能させることができません。
また頭皮は汗や油も多いため、こうした腐食に対する耐久性も必要になってきます。
導電性も高い必要があるでしょう。
こうした条件をクリアする材料として研究チームが目を付けたのが、グラフェンでした。
グラフェンとは炭素原子が六角形の格子状に並んだシートです。
1枚のグラフェンは1原子分の厚さしかなく、人間の髪の1000倍薄いと言われています。
しかし、その強度は「鋼鉄の200倍」であり、高い導電性と、腐食や汗に対する高い耐久性を備えています。
チームは、このグラフェンとシリコンを組み合わせることで、頭皮に密着する薄くて柔らかいセンサーを開発しました。
画像から分かる通り、このセンサーはシリコンの土台上に柔らかいグラフェンを六角形のパターンに形成することで成り立っています。
これによりグラフェンセンサーは頭部の丸みに対応して頭皮との接触状態を高め、たとえ髪の毛があったとしても高い精度で脳波を検知できるというのです。
そしてテストの結果、導電性ジェルを使用しなくても信号のノイズが少なく、湿式センサーと同等の感度を達成することに成功しました。
これはラジオでたとえるならば、電波が途切れ途切れになって聞き取りにくくなるような状態がなくなり、クリアな音質で聞けている状態と言えるでしょう。
新しいグラフェンを利用した乾式センサーは、従来の湿式センサーと同じくらい正確でクリアな計測が可能だったのです。
ただし、毛深い人への対応や汗などによる導電性の変化は現在もノイズの原因として存在しており、より精度の高い信号取得については今後の研究課題となっていくようです。
そして今回の研究は、実際このデバイスでロボット犬の脳波コントロールについても検証されました。