ニワトリはいつ、どこで誕生したのか?
ニワトリは今日、南極大陸をのぞく全ての大陸とバチカン市国をのぞく全ての国で飼育されています。
ニワトリの祖先は、東南アジアの森林に生息する「セキショクヤケイ」です。
体重1キロ弱で年間4〜8個の卵を産み、現代のニワトリと比べると明らかに小型で、筋肉量や産卵数もはるかに少ないと言えます。
ニワトリの飼育が始まった正確な時期は不明ですが、これまでの研究によると、約3600年前に今日のタイ辺りで家畜化され、3000年前までにはヨーロッパやオセアニアに広まったと考えられています。
ただ当時のニワトリは体重や産卵数もセキショクヤケイと同程度で、今日ほど家畜としての価値は高くなかったはずです。
それゆえ、なぜニワトリが急速に世界中に広まったのかは分かっていません。
日本列島にはいつ入ってきた?
ニワトリが日本列島に導入されたのは「弥生時代」とされています。
(※ 弥生時代は紀元前5世紀頃に始まり、紀元3世紀頃まで続いた。最近では紀元前10世紀にはすでに存在したという説もある)
しかし遺跡で見つかった骨の希少さから直接的な年代測定はされておらず、正確な導入時期は明らかになっていません。
その一方で、弥生文化の遺跡から出土したニワトリはほとんどがオスの成鳥と推定されています。
そのため、家畜化による繁殖は始まっていなかったこと、親密な関係性の証として中国や韓国から贈られただけであることなどが指摘されていました。
ところが今回、奈良県⽥原本町にある「唐古・鍵遺跡」にて、弥生中期と推定される溝からキジ科(キジ、ニワトリ、ヤマドリを含むグループ)のヒナの⾻4点が見つかったのです。
しかしながら、形態的特徴からはニワトリの骨かどうか判断できません。
そこでチームは、コラーゲンタンパク質量分析という2020年に確立されたばかりの方法で種の特定を実施。
わずか1mgの骨サンプルからコラーゲンタンパクを抽出して分析した結果、ニワトリのヒナと同定することに成功したのです。
紀元前3〜4世紀には「家畜化」が始まっていた可能性
さらに放射性炭素年代測定により、ヒナの骨は弥生中期の初めに当たる紀元前3〜4世紀のものと特定されました。
この結果から少なくとも唐古・鍵遺跡では、その時期にはニワトリの継代飼育が始まっていた可能性があります。
文献資料によると、紀元前641年には中国にニワトリがいたとされており、そこから紀元前3〜4世紀までには日本に導入されてきたと考えられます。
ただしヒナの骨が見つかった唐古・鍵遺跡は、弥生文化における最⼤規模の集落遺跡です。
そのため、ニワトリの飼育はこうした大規模なシステムを持つ集落でのみ可能なものであって、他の地域にはまだ普及していなかった可能性があります。
また⽇本列島のようにニワトリの導⼊初期に、その性⽐が著しくオスに偏る例は世界的にも類例が知られていません。
チームは今後、このような傾向が朝鮮や中国など他の東アジア圏でも⼀般的であったかも含め、調査を続けていく予定です。