どんな環境でも24時間継続して「空気中の水分から電力を生成する」デバイス
しかし、その水滴の集まりが電荷を帯び、条件が揃えば稲妻が発生します。
この時、雲の中では氷の粒同士が衝突を繰り返した結果、静電気が発生しており、正の電荷が雲の上層に、負の電荷が雲の下層に集まっています。
そして上層と下層の電位差が拡大すると稲妻が発生するのです。
リウ氏ら研究チームは、このメカニズムのポイントである「空気中の水滴ひとつひとつに電荷があること」や「上層と下層の電位差(電荷の不均衡な状態)」に着目し、空気中の水から電力を生成する「新たな発電システム」を開発することに成功しました。
彼らが開発したのは、「100nm(人間の髪の毛の幅の1000分の1以下)のナノ細孔を持つ薄い層」を小さな上部電極と下部電極で挟んだ装置です。
この装置を湿った空気に触れさせると、空気中の水分子が細孔を通って、上層から下層へと移動します。
この世のあらゆる物質は、正の電荷を持つ原子核と負の電荷を持つ電子で構成されています。
そして私達が子供の頃実験したように、2つの異なる物質を擦り合わせたとき、この電荷が移動して静電気が発生します。
このデバイスでも、水分子がナノ細孔(ナノチューブ)を通過するとき、まるで風船が丸めたカーペットの中を通過するかのようにして電荷を蓄積させます。
ここで大切なのは、「細孔が100nm未満」という点です。
分子が他の粒子と衝突することなく進むことができる平均距離(平均自由行程という)は100nmであり、これより小さな孔にすることで、水分子が細孔の層を通過する際に、簡単に細孔の端にぶつかるようにしているのです。
このことは、層の上部ほど、電荷を持った水分子と衝突しやすいことを意味します。
結果として、ナノ細孔の上層は下層に比べて電荷が増加。雷雲のような電荷の不均衡が生じて、電力が生成されるのです。
この装置は空気中に湿気がある限り動作するバッテリーとなります。
研究チームによると、空気中には水分が常に存在するため、この発電機はどんな天候でも、昼夜を問わず、また風が吹いても吹かなくても、年中無休で稼働するようです。
従来の風力発電機や太陽光発電機は、特定の条件下でのみ機能するものでしたが、新しいデバイスには、その制限が無いのです。
しかもこのデバイスの重要な点は仕組みに関してのみであり、ナノ細孔さえ構成できれば、どんな材料でも同様の機能を実現させることができるといいます。
このため、デバイスを利用する地域で入手しやすい素材を自由に選択でき、開発コストを低減させるのに役立ちます。
また、このデバイス1つの厚さは人間の髪の毛の幅よりも薄いため、何千個ものデバイスを積み重ねることで、設置面積を増やすことなく発電量をスケールアップできます。
研究チームの試算では、「1m3のスペースで1kWの電力を生成できる」ようです。
研究チームはこの方法で実際に電力が生成できることを実験で確認したと報告していますが、このデバイスが本格的に製品化されるのはまだ先の話になるでしょう。
彼らは、次のように期待を持って語っています。
「どこに行ってもクリーンな電気を利用できる未来の世界を想像してみてください。新しいデバイスは、そんな未来が現実になることを意味しています」
地球上の空気は基本的に湿気は必ず含むので、もし実現されれば空気があるだけで勝手に発電してくれる非常に有用なデバイスになりそうです。