宇宙空間での無線エネルギー伝送に成功!
2023年6月1日、米カルフォルニア工科大学の宇宙太陽光発電プロジェクト(SSPP)は宇宙空間での無線伝送と地上へのパワー照射に成功しました。
この結果は、宇宙太陽光発電実証機(SSPD-1)が行っている主要試験の1つであり、MAPLE(Microwave Array for Power-transfer Low-orbit Experiment)と呼ばれるマイクロ波電力伝送器によって得られました。
SSPPの共同ディレクターであるアリ・ハジミリ氏は「宇宙でのワイヤレスエネルギー伝送を実証した人はまだいません。私たちは柔軟な軽量構造と独自の集積回路を用いて、これを初めて成功させました」と述べています。
近年身近になってきたスマートフォンの無線充電(ワイヤレス給電)は単純な「ファラデーの電磁誘導」によって電気を伝送できます。
これは無線充電スタンドとスマホまでの距離がゼロに近い為可能な訳ですが、数メートルを超える様な無線送電には「マイクロ波」や「レーザー」を用いた新たな技術開発が必要とされています。
今回のカルフォルニア工科大学SSPPの発表では「マイクロ波」を用いたエネルギー伝送を試み、成功したことが報告されています。
革新的だったことを端的に述べると「①宇宙空間での無線送電を実証したこと。②地上へのパワー照射を成功させたこと。」です。
①宇宙空間での無線送電を実証したこと。
送信機アレイから約1フィートの距離にある2つの独立した受信機アレイでエネルギーを受信し、直流(DC)電気に変換して、その電力で1対のLEDを点灯させることに成功しました。
アレイとは電波を送受信するアンテナの集合体です。
送電距離は1フィートで地上までの距離と比較すると短いように感じますが、これは宇宙空間で無線エネルギー伝送技術の全工程「発電 ➡ 送電 ➡ 消費」を完結した初めての実証例です。
コスト削減の為、低コストのシリコン技術で作られたカスタム電子チップで駆動する柔軟な軽量マイクロ波電力伝送器のアレイを用いて、過酷な宇宙空間で無線エネルギー伝送を成功させたことは大きな成果です。
②地上へのパワー照射を成功させたこと。
送信機アレイによって電磁波の干渉を制御し、希望する場所にパワーを集中させることができます。
MAPLEでは宇宙空間から地表(ムーア研究所の屋上)へ向けてのエネルギー照射も行われました。
照射されたエネルギーはムーア研究所の屋上で予想通りの時刻に、予想通りの周波数で検出しました。
地上と上空や宇宙を行き交う信号はGPSを初め、航空機無線など様々な周波数の信号が飛び交っています。予想していた時刻に予想通りの周波数が検知されることはこの実験の正確さが担保されたと言えるでしょう。