MAPLE内部の宇宙からの写真
MAPLE内部の宇宙からの写真 / Credit : SSPP
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人工衛星の太陽光発電エネルギーを宇宙空間で無線伝送することに成功!

2023.06.24 Saturday

地上の太陽光発電は夜間の発電ができません。また、立地、天候や季節に発電量が大きく左右されてしまいます。

宇宙空間で行う太陽光発電はこうした問題に左右されず、無尽蔵に降り注ぐ太陽エネルギーから発電が可能です。

しかし、宇宙空間で発電したエネルギーを地上に伝送するには大きな課題があります。

米カルフォルニア工科大学(Caltech)は、宇宙空間において無線伝送に成功し、さらに、宇宙から地表へのエネルギー伝送も実証しました。

これは小規模ながら、宇宙太陽光発電技術の一連動作「宇宙空間内で太陽光エネルギーの無線伝送からLEDの点灯まで」を実証した初めての例です。

この技術に関する詳細は学術誌IEEEに2022年11月4日掲載されています。また、この実験の成果に関して、カルフォルニア工科大学2023年6月1日にホームページ上で公開しました。

In a First, Caltech’s Space Solar Power Demonstrator Wirelessly Transmits Power in Space【2023.6.6 時点】 https://www.caltech.edu/about/news/in-a-first-caltechs-space-solar-power-demonstrator-wirelessly-transmits-power-in-space SSPSに関してよくある質問(FAQ)【2023.6.6 時点】 https://www.kenkai.jaxa.jp/research/ssps/ssps-faq.html 宇宙太陽光発電システム(SSPS)について【2023.6.6 時点】 https://www.kenkai.jaxa.jp/research/ssps/ssps-ssps.html JAXAにおける宇宙太陽光発電システムへの取組状況について(資料3)2017.3.28【PDF】 https://www8.cao.go.jp/space/comittee//27-kiban/kiban-dai28/pdf/siryou3.pdf 宇宙で電力を送るということ 京都大学 三谷先生 2016.07.20【PDF】 http://www.usss.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2021/03/20160720_Mitani.pdf
The Caltech Space Solar Power Demonstration One Mission https://ieeexplore.ieee.org/document/9926883

宇宙空間での無線エネルギー伝送に成功!

2023年6月1日、米カルフォルニア工科大学の宇宙太陽光発電プロジェクト(SSPP)は宇宙空間での無線伝送と地上へのパワー照射に成功しました。

この結果は、宇宙太陽光発電実証機(SSPD-1)が行っている主要試験の1つであり、MAPLE(Microwave Array for Power-transfer Low-orbit Experiment)と呼ばれるマイクロ波電力伝送器によって得られました。

SSPPの共同ディレクターであるアリ・ハジミリ氏は「宇宙でのワイヤレスエネルギー伝送を実証した人はまだいません。私たちは柔軟な軽量構造と独自の集積回路を用いて、これを初めて成功させました」と述べています。

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SSPD-1の搭載されたモーメンツビゴライドとSSPD-1のMAPLEのアレイ。Credit : SSPP

近年身近になってきたスマートフォンの無線充電(ワイヤレス給電)は単純な「ファラデーの電磁誘導」によって電気を伝送できます。

これは無線充電スタンドとスマホまでの距離がゼロに近い為可能な訳ですが、数メートルを超える様な無線送電には「マイクロ波」や「レーザー」を用いた新たな技術開発が必要とされています。

今回のカルフォルニア工科大学SSPPの発表では「マイクロ波」を用いたエネルギー伝送を試み、成功したことが報告されています。

革新的だったことを端的に述べると「①宇宙空間での無線送電を実証したこと。②地上へのパワー照射を成功させたこと。」です。

①宇宙空間での無線送電を実証したこと。

送信機アレイから約1フィートの距離にある2つの独立した受信機アレイでエネルギーを受信し、直流(DC)電気に変換して、その電力で1対のLEDを点灯させることに成功しました。

アレイとは電波を送受信するアンテナの集合体です。

送電距離は1フィートで地上までの距離と比較すると短いように感じますが、これは宇宙空間で無線エネルギー伝送技術の全工程「発電 ➡ 送電 ➡ 消費」を完結した初めての実証例です。

コスト削減の為、低コストのシリコン技術で作られたカスタム電子チップで駆動する柔軟な軽量マイクロ波電力伝送器のアレイを用いて、過酷な宇宙空間で無線エネルギー伝送を成功させたことは大きな成果です。

MAPLE内部の宇宙からの写真。右が送信アレイ、左が受信アレイ。
MAPLE内部の宇宙からの写真。右が送信アレイ、左が受信アレイ。 / MAPLE内部の宇宙からの写真。右が送信アレイ、左が受信アレイ。Credit : SSPP

②地上へのパワー照射を成功させたこと。

送信機アレイによって電磁波の干渉を制御し、希望する場所にパワーを集中させることができます。

MAPLEでは宇宙空間から地表(ムーア研究所の屋上)へ向けてのエネルギー照射も行われました。

照射されたエネルギーはムーア研究所の屋上で予想通りの時刻に、予想通りの周波数で検出しました。

地上と上空や宇宙を行き交う信号はGPSを初め、航空機無線など様々な周波数の信号が飛び交っています。予想していた時刻に予想通りの周波数が検知されることはこの実験の正確さが担保されたと言えるでしょう。

ムーア研究所の屋上でMAPLEから電力を検出する様子
ムーア研究所の屋上でMAPLEから電力を検出する様子 / ムーア研究所の屋上で電力を検出する様子。Credit : Ali Hajimiri

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