過去の月には花崗岩を作れる環境があった
これまでの地質学の知識によれば、花崗岩が形成されるには大量の水や地球内部での物質を循環させるプレートテクトニクスが必要であるとされています。
花崗岩は他の火山岩と違って、単にマグマが冷えて固まっただけではできてくれず、材料となる火山岩(玄武岩)の多段階溶解や液状になった玄武岩での結晶分離といった「複雑」なプロセスが必要となるからです。
地球では地殻の沈み込み(融解)と再形成(冷却)が繰り返しと水の存在によりこのプロセスが支えられているため、多くの花崗岩を目にすることができます。
しかし太陽系において地球以外の星でプレートテクトニクスや液体の水は確認されておらず、水がない状態で花崗岩を作るには極端な高熱が必要になります。
そのため現在、地球以外の星で花崗岩はほとんど存在しないと考えられています。
しかし事実として月には高濃度の放射線物質を含んだ巨大な花崗岩の塊が存在しています。
このようなパラドックスに研究者たちは、ありえる2つの可能性について言及しました。
1つは、35億年前の月は私たちが思ったよりも地球に似ていた可能性です。
そしてもう1つは、私たちの知らない花崗岩生成手段が存在する可能性です。
前者が正しければ、過去の月には局所的にしてもかなりの量の水があったことになります。
また後者が正しければ、地質学の常識がひっくり返ることになるでしょう。
最後に研究者たちは今回の研究成果を利用することで、太陽系の他の惑星で花崗岩を探す役に立つだろうと述べました。