頑丈な「砂の城」が作れる材料の黄金比率
米コロラド州立大学(CSU)の地質工学エンジニアであるジョゼフ・スカリア(Joseph Scalia)氏によると、砂とは直径0.075mm〜4.75mmの鉱物の粒子を指します。
砂より小さい粒子は粘土またはシルト(砂と粘土の中間サイズ)に、大きい粒子は砂利に分類されます。
砂はお城の主要材料ですが、それらをつなぎ合わせる媒体として「水」が必要不可欠です。
米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)の堆積学者であるジム・ベスト(Jim Best)氏は「乾いた砂に少量の水を加えると、水が砂の表面に付着し、粒同士の間に小さな水の架け橋を形成する」 と説明します。
これが砂と砂を結びつける接着剤の役割を果たします。
また水の架け橋の強度は表面張力(水が表面をできるだけ小さくしようとする力)によって決まり、その力が最大化されるほど、砂粒同士の接着力も強くなります。
これには適切な水の量が必要で、少なすぎると水の架け橋が形成されませんし、多すぎると水の架け橋が消えてドロドロになります。
そこで英ボーンマス大学(Bournemouth University)の堆積学者であるマシュー・ベネット(Matthew Bennett)氏は2004年に、表面張力が最大化するのに最適な水の量を調査。
その結果、砂と水の黄金比率は乾燥砂8に対して水1であることが判明したのです。
これを魔法の公式にすると「水の量=砂の量×0.125」となります。
ベネット氏によると、この配合で表面張力が最大化され、最も崩れにくい頑丈な砂の城が作れたという。
ちなみに海辺で一々分量を計るのが面倒臭いときは、満潮線沿いの湿った砂がちょうど8:1くらいの比率になっているそうです。
満潮線は、波によって濡れている場所と波が届かない乾いた場所の境界線で、だいたい海藻や漂流物が転がっている辺りが目安となります。
なので海で砂の城をつくる際は、そんな波打ち際の砂を調達すると良いでしょう。
城の強度を高める他の手段
また物理学的にもう一歩踏み込むと、鋭く角張った砂粒を材料にするのも有効だといいます。
例えば、侵食が進んで球形に丸まった砂漠の砂などは、粒同士の摩擦抵抗が弱くてツルツル滑るので、砂の城が崩落しやすいです。
反対に、角張った砂ほど粒同士の摩擦抵抗が強くなるので、城の強度を高めるのに非常に向いています。
(ただ残念ながら、海の砂は侵食が進んでいるので角張った砂はほぼありません)
それから城の強度を高めるもう一つの方法は、砂に少量の粘土を加えることです。
砂より小さい粘土の粒子が、砂粒同士の隙間を埋めることで城の強度が自然と上がるのです。
実際、ギネス記録を達成したデンマークの城も、材料となる砂に約10%の粘土を混ぜ込んだという。
(さらにこの城の場合は、完成後も長く形を保つように全体をノリで固めている)
しかしギネス記録の更新を狙っている訳ではないのなら、8:1の黄金比率を覚えておくだけで十分でしょう。
また海水は塩を含んでいるので、太陽の熱で乾燥した後に塩が結晶化して、城の構造を安定化させる働きもしてくれるといいます。
ぜひ、この夏の海水浴のヒントにしてみてください。