印刷博物館で『銀河鉄道』の切符を刷ろう!
『銀河鉄道の夜』といえば、印刷博物館で『銀河鉄道』の切符を印刷できるイベントが話題になっています。
懐かしい紙の切符で、昔の活版印刷機を使って銀河鉄道の乗車券を自分で印刷できるというものです。
なぜこのイベントを印刷博物館でやるのかというと、『銀河鉄道の夜』の作中で、主人公のジョバンニが印刷所にて文選工(ぶんせんこう)のアルバイトをしているのが理由のひとつでしょう。
活版印刷とは、活字を組み合わせて作った版(活字組版)にインクを塗って紙に転写する印刷方法のこと。
文選工とは、この活字組版を作るために、多数の活字から指定された文字を探してピックアップし、正しく並べる仕事です。
活版印刷はデジタル印刷(DTP)の発達により、過去の技術となっていますが、味のある印刷物が刷れるので、今でも名刺の印刷などで好む人は多いです。
体験では『銀河鉄道の夜』の切符の印刷に使われる活字組版の現物を見ることもできます。ここからも物語の理解をより深められます。
「銀河鉄道の切符を実際に手にできる!」というだけでなく、理工学に興味がある人にとって、活版印刷機を実際に操作して、動く様子を間近で見られるのは魅力だと思います。
印刷博物館とは?
東京都文京区にある凸版印刷が設立した博物館で、印刷文化に関わる多数の資料を集めており、展示物として見物できるほか、活版印刷などを実際に体験できるイベントも行われています。
今回以外にも天文にまつわるイベントを行っており、2018年に、有名なガリレオの『天文対話』など、天文にまつわる印刷物が一堂に会した「天文学と印刷展」が開催された場所でもあります。今年も図録が再販されるほど、盛況でした。
印刷博物館のイベント「銀河鉄道の切符を印刷する」
『銀河鉄道』の切符を印刷できるイベントは、8月の第1週から第4週の火・水・木に行われており、『銀河鉄道』に登場する主要な駅を行き先として、週ごとに違う駅を印刷することができます。
第1週は「白鳥停車場」、第2週は「鷲の停車場」、第3週は「小さな停車場」、第4週が「南十字」です。
主人公のジョバンニが訪れた順に、銀河鉄道の最終目的地までとなります。
やはり、1番欲しいのは最終目的地の「南十字」の切符でしょう。作中では、車窓から見える大きな十字架の描写がまるで神聖な墓標にも感じられる、印象的なシーンでした。
ただ、筆者が体験したのは最初の駅の「白鳥停車場(作中では「白鳥の停車場」)」です。旅の始まりとなる駅なので、記憶に残るシーンが多い駅でもあります。
たとえば、はくちょう座のクチバシにあたる星、アルビレオが青い星と黄色い星の2つの星で構成される二重星であることから、天の川の流れを測る装置として、サファイア(碧玉)とトパーズ(黄玉)がくるくる回っている「アルビレオの観測所」として描写されているのは印象深いです。
なお、「小さな停車場」は何駅か作中で明記されていません。話の内容から、いて座かさそり座ではないかと推察されており、この印刷博物館のイベントでは、いて座で設定されています。
物語の中の季節は、ジョバンニが寝転んで空を見上げていたときに天頂にはくちょう座が昇ってきた時間から考えて、お盆頃ではと推察されています。なので、夏の時期にこのイベントをやるのはピッタリというわけですね。
また、印刷するのは「硬券」と呼ばれる昔使われていた紙の切符。硬券は4種類ありますが、今回はもっとも一般的に使用されているA型券です。
印刷がおわったら日付を刻印し、自ら改札鋏(かいさつはさみ)でチョキン、と切符切りをすることもできます。