まるで夜空に走る「銀河鉄道」が見える!?
ISS(国際宇宙ステーション)と同様に、夜空の観察対象としてSNSで話題になっているのが、「スターリンク衛星」です。
スターリンク衛星は、アメリカのスペースによる衛星インターネット「スターリンク」の人工衛星のことで、数十の衛星が列になって進みます。
並んで移動する光の点々がまるで汽車の車窓のように見え、『銀河鉄道の夜』をイメージさせます。
『銀河鉄道の夜』とは?
『銀河鉄道の夜』とは、宮沢賢治が執筆した物語で彼の代表作とも言える作品です。
主人公のジョバンニの父親は、仕事でずっと家に帰らず、母親は病気で寝ています。
生活のために仕事をしながら学校に通っているため、人と交流する時間も減り、いじめられている孤独で貧しい少年です。
ジョバンニの悪口をただひとり言わない、幼い頃からの親友がカムパネルラですが、昔のようには話ができなくなっていました。
ある日、ジョバンニが夜空を見上げていると、いつの間にか銀河鉄道の汽車に乗車しており、そのなかでカムパネルラに出会います。
2人は一緒に旅をし、さまざまなものを見ます。咲き乱れるリンドウの花や、中にゆらめく灯りが見える水晶の砂の河原、星空にはばたく鳥の群れなど、読者はジョバンニたちと一緒に銀河の中の美しい風景を体験することができます。
また、ジョバンニは旅の中でさまざまな人たちと出会って別れるのですが、実はその人たちは死者で、その人たちのいろいろな死と向き合い、見送っていきます。
最終的にはカムパネルラとも別れ、現実の世界でもカムパネルラはおぼれた友達を助けて死んでしまっていたことがわかります。
作中で描かれる美しい世界に加え、「生きるということは、自分だけでなく、過去や未来のすべての人との繋がりのうえにある。どんなふうに生きるのが幸せか、”ほんとうの幸い”とは何なのか」を考えさせられる深さが、この作品の魅力でしょう。
『銀河鉄道の夜』は天の川をめぐる旅
夏の観望会のシーズンは、『銀河鉄道の夜』の話を絡めて星空解説をすることが多いのですが、『銀河鉄道の夜』の話は好きでも、意外と実際の星図と結びついていない人は多い印象です。
『銀河鉄道の夜』は天の川にある星座を順にめぐっていく旅です。「天の川クルーズ」というとイメージしやすいのではないでしょうか。
正座早見を見ると、物語に出てくる停車場の星座は、ぜんぶ天の川の上にあることがわかります。
夏に星座観察をするときは、はくちょう座、わし座、さそり座、いて座と星空を見ながら『銀河鉄道の夜』のあのシーンはここで起こったのかと想像していくと、より物語への理解が深まって楽しめるはずですよ。
残念ながら、沖縄以外では日本では最終目的地の南十字星は見えないのですが、出発駅の星座であるはくちょう座は、星の並びが飛んでいる白鳥の姿を彷彿とさせる十字の形になっていて、別名「北十字」とも言います。
出発地の「北十字」と終着地の「南十字」で対になるので、やはり最後は南十字となりますね。
ちなみに南十字星は、上の画像の正座早見だと「春の大曲線」をたどり、からす座を通った先にあります。