アロエの皮には害虫が寄り付かない?
研究主任のデバシシュ・バンディオパダヤイ(Debasish Bandyopadhyay)氏は「現在、世界では年間数百万トンものアロエの皮が廃棄されている可能性が高い」と指摘。
その中で「私たちはアロエの皮に価値を見出し、何か役に立つ方法を見つけようと考えていました」と話します。
氏がアロエの皮に殺虫剤のポテンシャルを初めて感じたのは、同僚と地元にあるアロエベラ生産センターを訪れたときです。
彼らは害虫が他の植物の葉っぱを積極的に攻撃していたのに対し、アロエベラの葉にはほとんど近づかないことに気付きました。
家庭菜園業者の中には、アロエの果肉部分を天然の農薬混合物として使っている人もいますが、アロエの皮は注目されていません。
大規模なアロエベラ農家でも、アロエの皮は基本的に農業廃棄物として扱われています。
そこでバンディオパダヤイ氏らは、アロエベラの外皮に殺虫成分が存在するかどうかを本格的に調べることにしました。
殺虫効果を持つ6種類の化合物を特定!
チームはまず、アロエベラの外皮の潜在的な殺虫作用を明らかにするため、皮に含まれる化学物質を抽出しました。
植物の生理活性(アロエ内の化合物が様々な生理活動に与える作用)を変化させないよう、室温を保った暗所で外皮に空気をゆっくり当てながら乾燥させます。
その後、複数の抽出剤を使ってアロエベラの乾燥皮から化学物質を取り出し、それに対して農業害虫がどんな反応を示すかを実験。
すると、非常に高い殺虫効果が見られたため、チームは個々の化合物を特定できる「液体クロマトグラフィー質量分析法( LC/MS)」という方法を用いて、抽出物の化学的なプロファイリングを行いました。
その結果、アロエベラの皮に含まれる20種類以上の化合物が特定され、その多くは抗菌作用を種とする健康上のメリットがあるものと判明しています。
これはアロエの果肉が薬用として親しまれてきた長い歴史を考えれば、それほど驚くことではありません。
しかしチームは、アロエではこれまでに知られていない6種類の化合物:オクタコサノール、スベニアチンB、ジノテルブ、アルジュンゲニン、ノナデカノン、キライン酸を発見したのです。
これらはすべて、農業害虫に対して殺虫や防虫効果をもつ物質として知られています。
さらに特定されたアロエの化合物には毒性がなく、アロエの皮をベースとした殺虫剤の開発に安全性の懸念はないことも確認できました。
アロエの皮に含まれる殺虫成分が特定できたため、チームは次なるステップとして、実際の畑にいる農業害虫に対してどれくらいの効果があるかをテストする予定です。
それに加えて、これらの化合物が私たちの身近にいる蚊やダニに対しても同じ作用を発揮するかどうか調べていきたいと話します。
もし蚊やダニを含む害虫に広く効果が見られるなら、一般大衆にも役立つ画期的なアロエ殺虫剤が開発できるでしょう。
またアロエ生産者にとっては、今まで捨てていたアロエの皮を商業的に活用し、新たな収入源を生み出す可能性があります。
アロエは現在、ヨーグルトやドリンク、サプリメントなどの健康食品として親しまれていますが、今度は虫除けとして私たちの生活を支えてくれるかもしれません。