獲物の小型化により「頭も賢くなった」
研究によると、約2万5000〜5万年前の間に、石の槍より複雑で高度な狩猟道具が使われ始めたことが明らかになっています。
なぜなら人類が次に相手にする小型動物は、中型動物よりもさらに警戒心が強く、小回りが利いて、移動能力にも長けていたからです。
特に強い警戒心のせいで、石の槍で突き刺せる距離まで近づくことすらままなりませんでした。
そこで人類は弓矢や投げ専用の槍といった長距離から攻撃できる武器を発明します。
それだけでなく、家畜化された犬を用いた狩猟も始めました。
こうした武器の製作には高度な技術や科学的知識を必要とし、さらに猟犬には訓練をしなければなりません。
また人と猟犬が協力する戦術の考案なども必要となったでしょう。
このように獲物がどんどん小型化していくことが、図らずも「武器の進化」と「認知機能の向上」につながったのです。
また遺跡の調査では、先と同じように、弓矢や投げ槍がある場所では小型動物の骨が多くを占めることが判明しました。
チームが時代ごとの獲物のサイズ変化をまとめたところ、150万年前に人類が狩猟した動物の平均体重は3トンであったのに対し、2万年前には約25〜50キロにまで縮小していたとのことです。
以上の結果からチームは「有史以前の人類は、小型で素早い獲物を狩る必要性への適応として、技術的および認知的な進化を遂げたと結論できる」と述べています。
しかし皆さんはすでにお気づきかもしれませんが、小動物の狩りは非常な労力がかかるのに反し、得られるカロリーはちっぽけなものです。
このような狩猟は小動物の消失を待つまでもなく、持続的なものとはなりませんでした。
そうして人類は次に、自ら食糧を作り育てる「農業革命」の時代に突入していくのです。