子供の情緒に「腸内フローラ」が関係している?
自らの感情や欲求をコントロールする「感情制御」は、年齢を問わず大切な能力です。
ヒトの感情制御は3〜4歳頃の幼児期に最初の顕著な発達があらわれます。
これはこの時期に起こる脳(前頭前野)の急激な成熟と密接に関係していると言われています。
また過去の大規模研究で、幼児期の感情制御の発達は、将来(成人期)の経済力や心身の健康にも深く影響することが示されていました。
一方で、幼児期の感情制御には、公共の場で大人しく座っていられる子もいれば、大声で泣きわめく情緒の起伏が激しい子もいるように、大きな個人差があります。
しかし現時点で、何がその個人差を生み出しているのかは不明のままです。
従来の多くの研究は、個人差の原因を探るために、家庭の経済状況や学歴といった社会学的な側面にスポットを当ててきましたが、確たる証拠は得られていません。
そこで研究チームは、心身の健康や脳機能に影響を及ぼすことが明らかになりつつある「腸内フローラ(腸内細菌叢)」に注目しました。
成人を対象とした近年の研究では、腸内フローラの不健康が体の病気だけでなく、精神疾患(うつ病や不安症)の発症リスクを高めることが分かっています。
ここで重要となるのは、個人が生涯もつことになる腸内フローラの基盤は3〜5歳頃までに決まることです。
先に述べたように、この年齢は感情コントロールの顕著な発達が見られる時期と重なっています。
つまり、同時期に発達する「腸内フローラ」と「感情制御」は双方的に大きく関連している可能性があるのです。
にも関わらず、幼児を対象とした双方の比較研究はほとんど行われていませんでした。
そこでチームは今回、幼児の感情コントロール力に腸内フローラの健康が関係しているか調べることにしたのです。