見た目が完全にアメーバな「動物門の異端児」
現在の分類では、動物は大きく5つのグループ(門)に別けられることが知られています。
上の図からもわかるように、この5つのうち4つは人間、ヒトデ、海面、クシクラゲなど比較的メジャーな種が含まれていいます。
(※クラゲはヒトデと同じグループですが、クシクラゲは独自のグループを作っています)
しかし平板動物と呼ばれるグループは、多くの人にとって聞き覚えがないものでしょう。
平板動物は砂粒ほどの大きさしかない、ドロドロとした不定形の生物であり、主食となる微生物や藻類を丸呑みして体内で消化することで生きています。
平板動物がうまれたのはカンブリア紀やエディアカラ紀よりもさらに過去となる8億年前とされており、誕生以降ほとんど姿形を進化させていないと考えられています。
(※多細胞動物が誕生したのが10億年前と考えられています)
そのため現在において知られているのはわずか数種類であり、5つの動物門の中で最も種類が少なくなっています。
平板動物の体の構造は極めて単純となっており、体の厚さも細胞層が3つあるだけで、名前の通り全体的に平たい形をしています。
移動方法は主に繊毛であり、増殖方法は分裂や出芽となっています。
そのためアメーバの仲間のように思えますが、列記とした「動物」の一種であり、生命の木においても、海綿やクシクラゲのグループよりも、人間のほうに近い存在となっています。
しかし、そんな人間に近いハズの平板動物は、神経や筋肉、消化管といった動物にとって大切なあらゆる器官が存在しません。
先に述べたように、増殖方法も主に分裂や出芽であり、人間に近い部分はほとんどないように思えます。
(※平板動物も一応、卵子を作って有性生殖することも可能ですが、生殖器官はなく、体の細胞の一部が卵子化するだけです)
そこで今回、ゲノム制御センターの研究者たちは平板動物の体を徹底的に調べ、どんな細胞で構成されているかを調べることにしました。
器官レベルでは一致していなくても、細胞レベルでは人間に近い何かが潜んでいる可能性があったからです。
すると平板動物は主に9種類の細胞型が存在し、それぞれの細胞型が状況に応じて他の種類に変身できることが判明しました。
ですが最も興味深かったのは、神経伝達物質(神経ペプチド)を放出している奇妙な細胞「ペプチド作動性細胞」の存在でした。
脳も神経もないドロドロした細胞の塊にすぎない生物が、なぜ神経ペプチドを作る必要があったのでしょうか?