さそり座とはどんな星?
さそり座の歴史
夜空に目立つ「S字」の形。日本にはさそりはいないので、「さそり座」という名前ではなかったのですが、昔から認識されており、つりばりに見立てられて「うおつりぼし(魚釣り星)」と呼ばれていました。
そんなさそり座は、現代では「誕生日の星座」として有名です。空で太陽が通る道を「黄道」というのですが、この黄道上にある12の星座は季節を知るために重要な星座でした。それが自分の生まれた季節の星座として結びつけられるようになったのです。
この12星座は、黄道12星座とも呼ばれています。
そのため星座のところに太陽が位置するときが誕生月なのですが、実際のところ現在では誕生月と星座の位置は1月くらいズレてしまっています。たとえば牡羊座の誕生月は4月ですが、現代だと3月の誕生月である、うお座の位置に太陽があります。
地球の地軸(自転軸)は公転面に対して約23.4°傾いており、地球は自転軸をゆらしながら回転しています。地軸が指す方向はずっと同じではなく、公転面に垂直な方向に対して半径約23.4°の円を描くように移動しています。これを地球の歳差運動といいます。
これにより春分点の位置が少しずつずれ、黄道12星座が暦と結びつけられたときから現代にいたる約2000年の間に、ほぼ一星座ぶん位置がずれてしまっているのです。
さておき、さそり座を含む誕生日の12星座は、いずれも「トレミーの48星座」といわれる非常に古い時代に作られた星座です。
トレミーは2世紀前半の天文学者、プトレマイオスの英語名です。現在の星座は全部で88個あるのですが、彼の著作物に出てくる48の星座をベースに16世紀以降に星座が新たに加えられ、現在の88個になりました。
なので、歴史あるトレミーの48星座は有名なものが多く、ほとんどが神話を持つ星座です。
さそり座の神話
さそり座の神話といえば、もっとも有名な冬の星座であるオリオン座と一緒に語られます。
オリオンは狩りの名人でしたが、それを鼻にかけた言動や乱暴な狩りのやり方が大神ゼウスの妻である女神ヘラの怒りを買うことに。そしてヘラが放ったサソリにオリオンは刺され、命を落としてしまいます。
このため星座になったあとも、さそりを恐れるオリオンは、さそり座が地平線に沈む頃になると姿を現し、さそり座が昇ってくる頃になると逃げるように沈んでいくのだとか。
夏の星座のさそり座と、冬の星座であるオリオン座は同時に夜空に見えず、入れ替わるように見えるので、その観測をもとに神話が生まれたのでしょうね。
アンタレスとはどんな星?
そんなさそり座を探すときに目印となるのが、1等星のアンタレスです。宮沢賢治の作品『銀河鉄道の夜』で登場する、車窓から見える「さそりの火」は、この星のことです。明るいだけでなく、赤い色が特徴的なので、都会の空でもすぐわかります。
先ほどの神話では、さそり座とオリオン座が対になっていましたが、このアンタレスも「対」として付けられた名前なんです。
対となるのは、同じく赤く輝く火星。アンタレスは、「火星に対抗するもの」という意味を持ちます。
反対するもののことを「アンチ」と言いますよね? 「アンチ」は英語の「Antipathy」に由来する言葉で、反抗や対抗といった意味を持ちます。そして、火星はギリシャ神話で戦争の神、アレスと結び付けられています。つまり「Anti+Ares(アンチ・アレス)」で「アンタレス」となったのです。
アンタレスと火星の違いは?
実際に火星が地球に接近する時期がさそり座の見える時期とかぶった場合、確かに競争しあうかのように2つの赤い星は目立ちます。
とはいえ、アンタレスは恒星なので、自ら熱や光を出して光り輝いています。また、低い温度の星なので赤く見えます。恒星は高温な星ほど青白く、年をとって低温になるにつれ、黄色、赤と色が変化していきます。
それにとても大きく、直径が太陽の600〜800倍もあるのだとか。
いっぽう、火星が赤く見えるのは地表が酸化鉄、つまり赤サビに覆われているからです。また、地球に接近したときは、アンタレスとは比べ物にならないほど明るく輝きますが、惑星なので太陽の光を反射しているだけで、自身が光を発しているわけではありません。
大きさも、直径が地球の半分ほどと小さいです。
しかし地球からアンタレスまでの距離は約554.5光年。対して火星までは光速で約5分(約7700万km)です。
これだけ距離が異なりながら、地球から同じように見えるという点でアンタレスがいかに巨大で明るい星なのかがわかります。