脅威となる「月面の砂塵」を固めて道路にするプロジェクト
人類の月面での活動を阻んでいるのは砂塵です。
月の表面に堆積している砂塵「レゴリス」は、低重力環境ゆえ簡単に舞い上がってしまいます。
これが宇宙服を傷つけて重大なダメージを与えたり、精密機器を詰まらせたりするのです。
実際、月着陸探査機サーベイヤー3号の損傷は、アポロ12号の着陸時に巻き上げられた砂塵によって生じました。
宇宙船が着陸したり、月面車が走ったりするたびに砂塵が舞ってしまうなら、月面開発に打ち込むことは難しいでしょう。
そこで欧州宇宙機関(ESA)のプロジェクト「PAVER:paving the road for large area sintering of regolith」では、月面に堆積している月レゴリスを加熱して固めるアイデアを研究しています。
このプロジェクトチームを率いるのは、アーレン大学のパロマレス氏です。
月レゴリスは、焼結または融解によって緻密で固い構造を形成する可能性があります。
(焼結とは、固体粉末を融点よりも低い温度で加熱した時に、粉末が固まって緻密な物体になる現象のこと。融解とは、固体を加熱することで液体になる現象のこと)
つまりパロマレス氏らは、収束した太陽光やレーザー照射によってこの現象を月面で直接引き起こし、レゴリスを利用して舗装された月面道路を作ろうと考えているのです。