頻発する暴動に「顔認識機能」付きのスマート銃で対応する
内乱や暴動は世界中で発生していますが、多くは善良な市民たちの一時的な集団心理の加熱や混乱が原因です。
ここに攻撃力の高い兵器を用いて市民を虐殺すれば、政府への不信感を高めることになってしまいます。
そのため多くの国では、自国で頻発するデモ活動や争いに対処するために、ゴム弾の銃や警棒など、非殺傷武器を使用します。
暴動を鎮めることが目的の武器には、重傷を負わせたり命を奪ったりせずに、対象を無力化することが必要なのです。
そのため鎮圧用の武器には、絶妙なバランスが求められています。
ある程度の威力がないと対象を止めることはできませんが、威力が強すぎると当たり所によっては重傷を負わせてしまうからです。
実弾を用いないゴム弾は、代表的な非殺傷武器ですが、ここで問題になるのが頭部へのヒットです。
頭部へ強い衝撃が与えられた場合、当たりどころが悪いと命を落とす人が出てしまいます。
そこで銃器メーカーの「FN Herstal」は、最近、新しいスマート銃「FN Herstal Smart ProtectoR-303T」を発表しました。
この銃は、エラストマー弾(ゴムのように柔らかい高分子材料でできた弾)を圧縮空気によって発射します。
着弾するとその衝撃で弾が崩れるよう設計されているため、身体を貫通することはありません。
また作動距離は5~25mとなっており、手に持つ武器や投擲物よりも、はるかに広範囲な抑止力を提供します。
電力によって動作し、電力消費を削減する自動スリープモードも備えているのだとか。
使用状況によって差が生じますが、1度の充電で5~12時間の連続使用が可能です。
このスマート銃の最大の特徴は、内蔵されたカメラと顔認識システムにあります。
人間の頭をリアルタイムで検出し、ユーザーに対して視覚的および聴覚的に警告するのです。
そして頭部に銃口が向いている間は発砲できないよう、自動的にトリガーがロックされます。
また頭部以外に向けて発砲した場合にも、内蔵カメラが発砲時の状況を画像として記録し、鎮圧後の調査や状況証拠の提出に役立ちます。
私たちがカメラや携帯で写真を撮る際、それらのデバイスに備わっている顔認識機能を使うことは「今や当たり前」です。
同様の機能は、暴動を鎮圧するためのスマート銃にも追加されており、銃の頭部認識機能すら、将来は「当たり前」になるのかもしれません。
では、科学技術によって生み出されたこれら新しい武器は、世界で起こる暴動やデモの数を減少させられるのでしょうか。
実のところ、そうなるとは限りません。
トンネル工事や戦争の抑止力のために開発されたダイナマイトが、実際は大量虐殺に使われたように、道具がもたらす結果は、ユーザーやその技術を応用する人々しだいだからです。
例えば、スマート銃の顔認識機能は本来の意図と反して、殺傷能力の高い武器を生み出す恐れがあります。
頭部を認識して発砲できないよう制御できるということは、その技術を応用して、頭部だけに狙いを定める「ヘッドショットに特化した武器」を生み出すことも可能なはずです。
その場合は致命傷以外の無駄な射撃を減らし、戦費を節約するという方向でこのシステムが利用されるかもしれません。
世界中で頻発する暴動と、それらを鎮圧するための機能が、今後どのようになっていくのかは分かりませんが、その結果は近いうちに明らかになるでしょう。