最初に取り掛かるのは難しいタスクか、簡単なタスクか
作業に取り掛かる時、難しいタスクと簡単なタスクのどちらから手を付けますか。
難しいタスクから手を付けると、他の細々した作業が疎かになりそうですし、簡単なタスクから手を付けると、難しいタスクに手を付けないままになってしまいそうです。
近年の研究では、作業はじめに簡単なタスクをこなす方が仕事が捗るとの結果を報告しています。
米国のアメリカのハーバード・ビジネス・スクール(HBS:ハーバード大学の経営大学院)のフランセスカ・ジノ(Francessca Gino)らの研究チームは、タスクをこなす順番を実験的に操作し、タスクの達成量を比較しています。
実験の結果、朝に一日のタスクを書き出し、簡単なタスクから作業を進めた人は、集中力が長く続き、仕事への満足度も高くなりました。
なぜなら簡単なタスクをこなすと、その時点で大きな達成感を得ることができ、脳内にドーパミンが放出されるからです。ドーパミンには注意力やモチベーションを高める作用があるため、簡単なタスクをこなすと、その後の集中力が高まるというわけです。
しかし仕事の効率化に関するビジネス書を開いてみると、「難しい作業を先にこなす」ほうが良いとのアドバイスが散見されます。
この手の本として有名なのは、ブライアン・トレーシー著の「カエルを食べてしまえ!」でしょう。この本では「難しく重要なタスク」をカエルに見立て、朝一番にそのタスクをこなすべきであるとの主張をしています。
これは最初に難しく重要なタスクを行うことで、どうでもいいタスクに時間が謀殺されることなく、本当に重要なタスクに時間を投入できるという考えです。
難しく重要なタスクを脇に置き、重要でない、簡単なタスクをこなそうとする先延ばし現象は「達成バイアス」と呼ばれています。
作業に取り掛かる前に、部屋の掃除やメール・チェックをしたりなど、手近なタスクに集中力を使ってしまった経験は多くの人に心思い当たりがあるのではないでしょうか。
この達成バイアス(先延ばし)を回避し、最初に重要なタスクを終わらせるべきとする主張は、一見説得力があるように思えます。
たしかに難易度が高く、集中力を要するタスクを疲れていないはじめに終わらせてしまえば、あとは余裕をもって作業に取り組めそうです。
そこで米国のバージニア工科大学のエドワード・ライ氏(Edward Lai)らの研究チームは、「カエルを食べてしまえ!」の主張を検証する研究を行いました。
その結果は、どうなったのでしょうか?