最後にこなすタスクで全体の評価が変わる
実験では、参加者を簡単なタスクを先に行う人と、難しいタスクを先に行う人の2つのグループに分け、行なった作業の難易度の評価、全体の満足度が変わるのかについて検討しています。
実験に参加したのは大学生201名でした。
参加者は以下の難しいタスクと簡単なタスクを取り組んでもらっています。
難しいタスク:先頭のアルファベットが同じ本(たとえば「Another Day in Paradise」や「Across Many Mountains」)10冊をアルファベット順で並べる
簡単なタスク:先頭のアルファベットが違う本(たとえば「Catch Me if You Can」や「After the Snow 」)10冊をアルファベット順で並べる
本のタイトルの先頭のアルファベットが同じ場合には、2文字目以降の文字を考慮しなければならず難しい一方で、先頭のアルファベットが違う場合には、先頭の文字のみで簡単に判断できます。
そしてタスクをやり終えた後にどれだけ難しかったか、タスクをどれだけうまくできたかを評価してました。
実験の結果、最後に簡単なタスクをこなした場合には、最後に難しいタスクをこなした場合と比較して、全体のタスクの難易度がより低く、疲労感が少ないと評価する傾向がありました。
さらに、全体のタスクに対して感じる難易度・疲労感の低下は、作業全体に対する満足感とモチベーションを高めることも分かっています。
研究チームはこの現象を「簡単付加効果(The easy addendum effect )」と呼んでいます。
ではなぜ簡単付加効果は生じるのでしょうか。
研究チームは、「親近性効果(Recency effect)」によって説明できるのでないかと述べています。
親近性効果とは、米国の心理学者ノーマン・アンダーソン(Norman Anderson)氏が提唱したもので、より直近の出来事の方が記憶に残りやすい傾向を意味します。
簡単付加効果では、全体のタスクを評価する際、経験の最後に行った簡単なタスクを思い出しやすく、最後に難しいタスクを行った場合よりも、全体的に簡単だったと評価しやすいと考えられます。
しかし研究チームは「簡単付加効果が役に立たないケースもある。こなすタスクが複雑過ぎたり、タスクの種類が違ったり、完了するまでの時間が長期に渡る場合、効果が生じるかは分からない」と述べており、さらなる調査が必要です。
前述したハーバード・ビジネス・スクールのフランセスカ氏らの研究と合わせて考えると、次のような順序でタスクをこなすとよいかもしれません。
それは、最初は簡単なタスクで達成感を出し、集中力をブーストした後に、難しいタスクに取り掛かり、最後は再度簡単なタスクをこなし、行った作業に対する難易度と疲労感を低下させ、満足感とモチベーションを高める方法です。
今度作業する際に参考にしてはいかがでしょうか。