ダンキングできるオウムを発見!
今回、ダンキング行動が見つかったのは、インドネシアのタニンバル諸島を原産地とする「シロビタイムジオウム(学名:Cacatua goffiniana)」です。
研究チームが彼らのダンキングに気づいたのは、飼育下にあるオウムたちに昼食の餌やりをしていたときでした。
乾燥した餌を水の入ったボウルに浸していた個体がいたのです。
そこでチームはこの行動が偶然のものなのか、それともシロビタイムジオウムに普遍的なものなのかを調べることにしました。
実験では、18羽のシロビタイムジオウム(オス9羽、メス9羽)にバナナチップやココナッツチップ、ラスク(焼き上げたパンを再度焼くハードブレッド)などの乾燥した餌を与え、12日間にわたり、どのオウムがダンキングしたか、ダンキングした餌は何か、どれくらいの時間ダンキングしたかを記録しました。
また飼育ケージの中には必ず水の入ったボウルが設置されています。
その結果、18羽のうち7羽のオウムが少なくとも一度は餌を水に浸すダンキング行動を取っていることが明らかになったのです。
ダンキング対象となる餌として最も多かったのは、圧倒的に「ラスク」でした。
ダンキングをした7羽のオウムのうち、バナナチップを水に浸したのは4羽、ココナッツチップを浸したのは2羽でしたが、ラスクは7羽全員が水に浸して食べていました。
ダンキングの時間はかなりバラつきが見られましたが、中には餌の芯がふやふやに柔らかくなるまで水に浸していたオウムもいたようです。
さらにチームは、7羽のうち最もダンキングを多用していたキウィ(Kiwi)とピピン(Pippin)の2羽を分析しました。
すると、2羽ともバナナチップやココナッツチップは水に浸けずに乾燥したまま食べることの方が多かったのに対し、ラスクに関してはほとんど必ず水に浸けて食べていたのです。
オウムは丈夫なクチバシを持っているので乾燥したままでも十分に食べられますが、どうやらダンキングをするオウムたちは硬いままのラスクよりも水に浸して柔らかくなったラスクの食感を好んでいると考えられます。
オウムも食感を楽しんでいる?
研究者の見解では、餌の中にミールワームのような生き餌はなかったため、オウムが生き餌を溺れさせて動きを止めるためにダンキングをした可能性は除外されました。
それからボウルの水は餌を食べるのとは別に普通に飲んでいたため、ダンキングで水分補給している線も薄いです。
またオウムは全ての種類の餌をダンキングしているわけではないことから、餌を水で洗って汚れを落とそうとしていたとも考えられません。
そしてチームは、ダンキングの優先度としてラスクが最も高いことから、オウムたちは「食感を向上させるための戦略としてダンキングをした可能性が高い」と指摘しました。
というのも、バナナチップやココナッツチップはあまり水を吸わないため、ダンキング後もそこまで柔らかさは変わりません。
しかしパン生地のラスクは水分を吸収しやすい上に、水を含むと柔らかくなって食感が大きく変化します。
それに気づいた一部のオウムたちがラスクを優先的に水に浸して、その食感を楽しんでいるのでしょう。
またダンキング行動には「餌をすぐに食べたい」という衝動の抑制と「水に浸しておくのに時間と手間がかかる」という忍耐が必要であるため、オウムたちの認知機能の高さを浮き彫りにしています。
研究者らは「ダンキングできるのは飼育下にある一部のオウムだけであり、野生下では観察されていないため、これは食事におけるイノベーション(革新)であると考えられる」と述べました。
おそらく野生下では周りに天敵もいますし、餌が安定して得られるわけでもないため、ゆったりとダンキングしている暇はないのでしょう。
もしかしたら今回の事例は、安全かつ餌も安定して得られる飼育環境ゆえに、オウムがダンキングを発明できたのかもしれません。