「リズミカルな動きを好む人間が、尻尾をよく振るイヌを選んできた」説
オオカミを家畜化したのがイヌだと考えられています。
その点を考慮しつつ、100以上の研究を分析した結果、今回研究チームは、「家畜化の過程で、イヌは尻尾を頻繁に振るようになった」という仮説を導き出しました。
簡単に言うと、人間が「尻尾をよく振る種」を選んで飼育し、掛け合わせることで、その特徴が強化され、現代のイヌでよく見られるようになったというわけです。
ただし研究チームによると、この仮説にも2つのパターンが考えられるという。
可能性の1つは、「尻尾を振る行動は、他の形質の選択の副産物として生じた」というもの。
人間は比較的従順で大人しいイヌを選択してきましたが、実はそれらの形質が、遺伝的に尻尾を振る行動と関連していたというのです。
人間が「イヌの尻尾振り」を好んだわけではなく、求めていた他の形質に「おまけ」としてくっ付いてきたわけですね。
そして、もう1つの可能性として挙げられたのは、「人間がリズミカルな刺激に惹かれるため、自然とより尻尾を振るイヌを選択していた」というもの。
いくつかの研究によると、人間は音楽や馬の蹄の音など、リズムカルな刺激に惹かれる傾向があるようです。
そして特に惹かれるのは、メトロノームのように一定のリズムで生じる動きや音なのだとか。
研究チームは、こうした人間の好みから、「人間が意識的もしくは無意識的に、尻尾をメトロノームのように振るイヌを好んで育てたかもしれない」と考えているのです。
もちろん、これは仮説の1つに過ぎず、実験や研究によってこの説を支持する有力な証拠が得られたわけでもありません。
イヌの尻尾振りについてより正しく理解するには、まだまだ多くの研究を重ねる必要があるでしょう。
とはいえ、実際にイヌの尻尾振りが嫌いな愛犬家はおらず、むしろ「うれしい」「癒される」と感じる人がほとんどでしょう。
次に、イヌが尻尾を振っているのを見る時、「自分のこの幸せな気持ちは、尻尾のリズミカルな動きから来ているのだろうか」なんて考えてみるのも楽しいかもしれませんね。