運動後の疲労回復にはノンアルコール・ビールを飲むとよい
そこで独ミュンヘン工科大学のシェール、ヨハネス氏(Scherr Johannes)らの研究チームは、スポーツ飲料としてのノンアルコール・ビールの効果を検証しました。
彼らはノンアルコール・ビールのポリフェノール成分に焦点を当て、実験を行っています。
実験に参加したのは、2009年のミュンヘン・マラソン(42.195 km)に出場した男性277名でした。
実験者は参加者を以下の2つのグループに分けています。
ノンアルコール・ビールグループ:マラソン前の3週間と後の2週間、毎日約1-1.5 Lのノンアルコールビールを飲む
プラセボ・グループ:マラソン前の3週間と後の2週間、毎日ポリフェノールを除いたノンアルコールビールと同じ成分を含む、味・色が同じ飲料(プラセボ飲料)を約1-1.5 L飲む
そしてマラソン参加前と完走直後、24時間後、72時間後に血液の採取し、体内の炎症度合いが実験介入によって変わるのかを比較しています。
実験の結果、ノンアルコール・ビールを飲んだ人は、プラセボ飲料を飲んだ人と比較して、レース後の体内の炎症マーカー(インターロイキン-6と血中の白血球の数)が低く、免疫機能が改善されていました。
またプラセボ飲料を飲んだ人と比較して、ノンアルコール・ビールを飲んだ人はレース後の情動感染症(風邪)の発症率が約3.25倍低いこともわかっています。
研究チームは「ノンアルコールビールを飲むことで、物理なストレスによって弱まった免疫システムを修復することが証明できた。また免疫システムの過剰な反応も防ぐことができる」と述べています。
ビールに「ポリフェノール」が豊富なことは昔から有名な話で、適度な飲酒が心疾患リスクを予防すること、その効果は赤ワインに匹敵するレベルであることが過去の報告をレビューした研究でも報告されています。
しかしビールに含まれるアルコールは、心血管疾患リスクを高めるHDL-コレステロール値の上昇を引き起こすなど、ポリフェノールから得られるメリット以上に大きなデメリットがあります。
その点、ノンアルコール・ビールは、普通のビールよりはポリフェノールの量は劣るものの、アルコールがもたらす懸念点がありません。
またノンアルコール・ビールは、運動後の体内の水分と電解質のバランスの維持にも寄与することも分かっています。
水分補給、体内の水分と電解質(イオン)のバランスの維持、そして抗炎症効果と、ノンアルコール・ビールは運動後の健康飲料として有用なのかもしれません。