ADHDを持つ成人は世界で3億人を超えている?
ADHDとは、集中力が持続しない「不注意」、落ち着きがない「多動性」、思いつくとすぐに行動してしまう「衝動性」などを特徴とする発達障害です。
その多くは12歳以前の小児期から見られますが、思春期や大人になってからADHDと診断されるケースもよくあります。
特に成人後のADHDでは、多動性や衝動性は目立たなくなるものの、不注意の特性が強くなり、私生活での物忘れ、仕事中のうっかりミスや遅刻、作業時間の大幅なオーバーが多くなります。
そして昨今は、成人期にADHDと診断される人の割合が世界的に増加傾向にあることが明らかになってきました。
米ペンシルベニア大学(The University of Pennsylvania)で精神医学を専門とするラッセル・ラムゼイ(Russell Ramsay)氏は「現在は全世界で約3億6600万人の成人がADHDを有病しており、これがアメリカの総人口とほぼ同じです」と述べています。
その要因として、ADHD診断の精度が高まっていることも指摘されますが、研究者らそれ以上に「スマホの過剰使用」を問題視し始めています。
スマホの過剰使用でADHDになる?
2018年に発表された研究では、1日に2時間以上スマホを使用している人は、スマホ使用が少ない人に比べて、ADHDの症状を発症するリスクが10%も高いことが示されました(Journal of the American Medical Association, 2018)。
これはどういうことなのでしょか?
研究者の説明によると、スマホでのSNSやネットサーフィンは人々に絶え間なく新しい情報を提供し続けています。
また私たちはスマホを開くだけで、簡単にそれらの新しい情報を得ることができます。
そうなると私たちはスマホをチェックするために、私生活でも仕事中でも頻繁に小休憩を取るようになってしまうのです。
常にスマホでSNSをチェックしている人の中には、勤務中でも頻繁に小休憩を取って、誰かが自分の投稿に「いいね」をしたり、コメントをしていないか、確認せずにはいられなくなっている方も多いでしょう。
この状況はまさにADHDに見られる注意散漫の状態と同じなのです。
加えて、自由時間や休憩時間をもスマホの閲覧に費やすことで、脳を休める時間がなくなり、仕事中の集中力が低下します。
つまり、スマホを頻繁に見てしまう状態が、すでにADHDに特有の注意散漫や集中力の低下といった症状を体現しているのです。