古参の反対派と新参者では政治関心や嗜好が異なる
東京大学、早稲田大学、筑波大学の教授らによる研究グループが行ったのは、2021年の1年間にTwitterで投稿された「ワクチン」という単語が含まれる約1億件のツイートの分析です。
研究者らはまず、これらのツイートを、機械学習を用いて「ワクチンを応援する」「ワクチン政策に疑問を投げかける」「ワクチンに反対する」という3つのグループに分類しました。
次に、ワクチン反対の声を広めているアカウントの特定を行い、これを「ワクチン反対ツイート拡散アカウント」と名付けます。さらに、拡散アカウントを多くフォローしている人たちは「ワクチン反対派」と定義しました。
そして、データを以下の3つに焦点を当てて分析しました。
- ワクチン賛成派と反対派を比較し、反対派の特徴を探る
- コロナ前から反対していた人と、コロナ禍をきっかけに反対するようになった人を比べ、新たに反ワクチン的態度を持った人の特徴と「きっかけ」を明らかにする
- 新たに反ワクチン的態度を持った人の政治的な特徴を明らかにする
1の分析から、ワクチン反対派は賛成派と比べて政治的関心が高く、リベラルな傾向の人が多いとわかりました。一方の賛成派は、主にゲームやアニメなど私的な趣味への関心が強く、政治への関心は低い傾向がみられたのです。
2の分析からは、コロナ禍より新たにワクチン反対的態度を持つようになった人々の傾向がわかりました。
以前からの反対派は政治的関心が強いのに対し、新たな反対派は政治的な傾向が弱かったのです。
また、陰謀論やスピリチュアリティへの興味が強い傾向もみられました。新たな反対派のプロフィール文に「集団ストーキング」「テクノロジー犯罪」「波動」「宇宙」「スピリチュアル」「柔軟剤」などが含まれていたのです。
これについて研究者らは、「コロナ禍以降、新たにワクチン反対派になった人々は、陰謀論やスピリチュアリティに対する関心がきっかけとなって反ワクチン的態度を持つようになった可能性が示唆される」と述べています。
3の分析からは、以前からの反対派は、立憲民主党やれいわ新選組、日本共産党などを支持する傾向がありました。一方、新たな反対派は、こうした既存の政党をフォローする傾向が弱いとわかりました。
興味深いのは2022年の3月から9月にかけて参政党アカウントへのフォローが急速に高まった点です。これについて研究者は「陰謀論やスピリチュアリティをきっかけとして反ワクチン的態度を持ち、さらに反ワクチンを掲げる参政党への支持を強めた可能性がある」と分析しました。