内部の電子回路そのものがアンテナになってしまう
カメラ技術は現代社会で不可欠なものとなり、スマートフォン、家庭用セキュリティシステム、さらにはIoTデバイスに至るまで、あらゆるものに組み込まれています。
これらのデバイスは私たちの生活を便利にし、身の安全や犯罪者の逮捕に役立っています。
また暗号化やセキュリティー技術のお陰で、私たちはプライベートな映像をある程度、安心して送ることが可能です。
しかしノースイースタン大学のケビン・フー教授は、カメラ内部の「ある部品」を利用した新たな盗聴方法を発見しました。
この方法は「EM Eye」と名付けられ、現在一般に売られているカメラではどんな暗号化通信技術を追加しても、盗聴を防ぐことはできません。
さらにこの技術を使うためには高価な設備は不要で、数百ドルの投資と基本的な知識があれば足りるのです。
いったいどのような手段で「EM Eye」はセキュリティーを突破しているのでしょうか?
「EM Eye」は内部回路の電磁波を収集して分析できる
新たなシステム「EM Eye」が狙うのは、回路そのものです。
例えば、セキュリティカメラやスマートフォンのカメラには、撮影した映像情報をICチップまで届ける内部回路が必須です。
どんなカメラも検知した光の信号をデジタル化する過程が必要であり、さらにデジタル化したデータを移動させるには内部回路、つまり電線の中を通る必要があります。
このプロセスは電気回路を持つ装置ならば宿命づけられているものと言えます。
ですが中学や高校で習う電磁気学の教科書には、送電線に電気が通ると必然的に電磁波が発生することが記されています。
つまり電気回路のどんなに小さな導線であっても、電気が流れる限り、隠れたアンテナの役割を果たしてしまうのです。
セキュリティカメラの場合は、カメラ本体と記録媒体を繋ぐ長いケーブルが、スマートフォンの場合もカメラの部品からICチップへと向かう導線が、アンテナの役割を果たしてしまいます。
そしてこの放射は、カメラが捉えた映像データの情報を含んでおり、適切な装置さえあれば第三者が受信することが可能です。
通常スマホなどの機器はネットワーク送受信に対して暗号化技術を用いていますが、カメラ自体は一般に市販されているものが組み込まれており、カメラとチップとの間の信号に暗号化が施されることはありません。
ただ理論的にはそうであっても、検証が行われることは稀でした。
アンテナからアンテナに向けた電波送信ですらしばしば問題を抱えるのに、本来アンテナでもなんでもない短い導線からクリアな映像を検知できるとは考えにくかったからです。
また、たとえ被写体の情報を含む電波が存在していたとしても、スマホなどの電子機器の内部からはカメラに関するものの他に無数の情報処理にかかわる電気信号が回路を飛び交っており、検知できずに埋もれてしまう可能性もあります。