植物は微小重力だと「方向感覚を失う」
レタスのような葉物野菜は、健康的な食生活に不可欠です。地上に暮らすわたしたちだけでなく、宇宙での生活においても、野菜の摂取は健康維持の鍵となります。
そのため、国際宇宙ステーション(ISS)での植物の栽培は、長期宇宙滞在時の健康リスクを軽減する有望な食料源として期待され、推進されています。
たとえば、2014年から2016年にかけては、ISSでレタス栽培プロジェクトが行われ、大きな注目を集めました。
一方でISSは、サルモネラ菌、大腸菌、シゲラ菌など、食中毒を引き起こす細菌が生息する環境であることも知られています。
ここで浮かんでくるのが、細菌と植物との関係が、地球上と変わらないのかという疑問です。
地上では、植物は細菌などのストレス因子を近くに感じると、気孔を閉じて自分の身を守ります。この機能により、細菌が存在する環境でも、気孔からの感染は抑制されるわけです。
しかし、宇宙ステーション内部のような微小重力環境で、この植物の自己防御機能が変化するかどうか、またどのように変化するかは十分に理解されていませんでした。
そこでデラウェア大学(University of Delaware)のトッツライン氏(Noah Totsline)らは、人工的に微小重力状態をつくりだし、細菌と植物の相互作用を観察しました。
結果、微小重力状態でレタスの気孔は、細菌に対しても大きく開いた状態のままであることが明らかになりました。
通常、植物は根を使って重力を感知し、重力の方向に沿って成長します。しかし重力の影響が抑えられると、植物の防御機能がうまく働かなくなる可能性あるそうです。
「植物はどっちが上か下かわからなくなった。わたしたちは実質的に、植物の重力を感知する力を乱したんですね」とトッツライン氏は述べています。