命がけの通過儀礼だった麻疹
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによる感染症です。
麻疹ウイルスに感染すると、10日ほどの潜伏期間を経た後、38度ほどの熱が数日間続きます。
その後一旦熱が下がるものの、半日後に再び高熱が出て、その後全身に赤い発疹で広がるのです。
麻疹は通常であれば一週間ほどで回復しますが、重症化する場合もあり、その場合は肺炎や脳炎などといった深刻な症状を引き起こします。
さらに麻疹は現代でも発病してからの治療法はなく、病院で麻疹の患者に行われるのはもっぱら対処療法です。
そのようなこともあって麻疹はとても危ない病気であり、衛生状態がよく、高度な医療を受けることができる現代の日本であったとしても、感染した人のうち1000人に1人が命を落としています。
ただ現代では、麻疹は予防接種によって抗体をつけることができ、感染の危険性を大幅に下げることができます。
しかしそのようなもののない江戸時代においては麻疹の感染を防ぐことは困難であり、麻疹の感染は生死を分かつ一生に一度の通過儀礼として捉えられていたのです。
もちろん衛生状態も医療も現代より劣悪な江戸時代においては、感染して命を落とす人の割合は現代よりも多かったことは語るまでもないでしょう。
それゆえ「疱瘡(天然痘)は見目定め、麻疹は命定め」と呼ばれており、まさに命がけの通過儀礼でした。