見た目が魅力的だと、サービスの質も高く感じられる
航空産業は世界的に発展を続けている部門の一つです。
国際化している現代では多くの人が飛行機に乗って世界を飛び回るようになりました。
その一方で、航空産業は競争が激しいのに反し、競合する他社との差別化を図るのが難しいともいわれています。
どこの会社も基本的な業務は共通しているからです。
しかしその中で今、他社と差をつけられる数少ない点として注目されているのが「サービスの質」です。
特に客室乗務員のサービスは顧客の満足度に強く影響し、その良し悪しで航空会社の印象も大きく左右されます。
顧客を満足させるには当然ながら、接客の経験や訓練を積むことも大切ですが、他方で専門家らは、より簡単なアプローチとして「客室乗務員の外見の魅力度を高める」ことが有効であると考えています。
なぜなら私たちは一般に相手の話し方や態度だけでなく、見た目の魅力にも無意識的に反応してしまうものだからです。
そこで研究チームは今回、客室乗務員の見た目の魅力度が顧客のサービス満足度にどのような影響を与えるかを検証しました。
調査では過去12カ月間に航空会社を利用したトルコ在住の一般人37名(男性19名・女性18名・年齢19〜47歳)を対象としています。
チームは機内における客室乗務員のサービスのさまざまな側面を提示するビデオを計20本作成しました。
被験者にはこの20本のビデオをランダムな順番で見せ、そこで観察されたサービスの質を評価してもらいます。
チェックポイントとしては、客室乗務員の見た目の魅力度(髪型や服装、メイクアップを含めた総合的な身だしなみ)に加え、
・信頼性(約束したサービスを正確に提供できたか)
・即応性(顧客の要望や問題に迅速に対応できたか)
・安心感(顧客に安心や信頼を抱かせる礼儀や知識、対応力があったか)
・共感力(顧客に対する思いやりや注意が行き届いていたか)
などを含めて、サービスに対する満足度を評価してもらいました。
さらに実験では、ビデオを見てもらっている間に被験者の脳波(EEG)も測定しています。
そしてデータ分析の結果、外見の魅力度が高いと評価された客室乗務員は、魅力度の評価が低かった客室乗務員に比べて、サービスの質が高いと評価されやすくなっていたのです。
また客観的な脳波データを見ても、被験者は魅力的でないと感じた客室乗務員より、魅力的だと感じた客室乗務員を見ているときに、より強く活性化していることが示されました。
これらの結果を受けてチームは、顧客は見た目の魅力的な客室乗務員によって提供されたサービスほど、より好ましく感じる可能性があると結論づけています。
外見の魅力度は自らの意思で改善可能であるため、身だしなみにより注意を払うことで、航空会社にとっても顧客にとっても有益な効果が得られると期待できるでしょう。
一方でチームは、本調査の対象者が少なかったこと、および全員がトルコ人であったことから限界もあると述べています。
見た目の効果をより明瞭に確かめるには、広範囲にわたる文化圏の大規模な人数を対象に同様の調査をする必要があります。
ただこうした研究結果を聞かずとも、ほとんどの人は他者とのコミュニケーションにおいて見た目の印象が重要であることを過去の経験から十分に心得ているはずです。
今回得られた知見は客室乗務員だけでなく、あらゆるサービス業で有効なものかもしれません。