栄養状態の改善で、囚人の暴力行為が減った!
ウィルソン氏は2008年〜2013年にかけて、女性の囚人にセラピーを提供する慈善団体で働いていました。
同氏によると、女性の囚人はイギリス全体の囚人のわずか6%だったにも関わらず、当時イギリスの刑務所全体で起きていた自傷行為の約50%を占めていたといいます。
この問題に頭を悩ましていたちょうどその頃、ウィルソン氏はある興味深い研究報告に出会いました。
それは囚人にビタミン・ミネラル・脂肪酸などの必須栄養素を含む栄養補助食品を与えたところ、何もしていない対照群と比べて暴力行為が有意に低下したというものでした。
この研究はオランダ・ラドバウド大学(Radboud University)により2009年に報告されています(Aggressive Behavior, 2009)。
実験では、刑務所に収容されている221名の囚人(18〜25歳)を2つのグループに分けて、一方に栄養補助食品を、もう一方にプラセボ(何の栄養素も含んでいないもの)を1〜3カ月にわたり投与しました。
その結果、栄養補助食品を摂取し続けたグループ(115名)はプラセボ群(106名)に比べて、暴力行為が約30%も減少したのです。
さらに同じ研究成果は英オックスフォード大学(University of Oxford)によっても報告されています(The British Journal of Psychiatry, 2018)。
同チームは前提として、囚人が栄養価を欠いた食事を提供されており、これが日常における暴力性に繋がっているのではないかと仮説を立てていました。
そこで18歳以上の囚人231名を対象に必須栄養素を含んだサプリメントを与えて、プラセボ対照群と比較。
その結果、サプリメント摂取したグループはわずか2週間で、プラセボ対照群に比べて暴力行為が約35.1%も減少したのです。
では、なぜバランスの良い食事が暴力性を緩和してくれるのでしょうか?