世界初!歯生え薬の治験が2024年9月から始まる
2024年3月、北村病院の高橋氏ら研究チームが開発する、先天性無歯症患者を対象とした「歯生え薬」の研究計画が、厚生労働省所轄の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」によって承認されました。
これに伴い研究チームは、治験を開始することにしました。
治験の対象者は、奥歯(臼歯:6歳ごろに乳歯の奥に生える最初の永久歯)の欠損・欠如1本以上の男性であり、その人数は30名です。
実施時期は、2024年9月~2025年8月を予定しており、参加者には世界初の「歯生え薬」が投与されます。
この試験では、主に歯生え薬の安全性を確認するため、治験の対象者は患者ではなく健常人です。
それでも、薬の効果が発現して歯が生えても問題無いように、「奥歯が1本以上無いこと」が条件になっています。
第二の治験では、有効性の確認も行われ、医療ニーズが極めて高い先天性無歯症患者を対象にします。
現在の想定では、2~7歳で4本以上の先天欠如歯に該当する方が対象となります。
その対象者は、登録施設で受診し、レジストリ登録(治験対象患者候補登録)された人の中から選ばれます。
北野病院のサイトでは、「レジストリ登録するための流れ」も掲載されています。
これらの治験がどのような結果になるか分かりませんが、研究チームは、2030年の実用化を目指しています。
数年後には、先天性無歯症で苦しんできた患者や家族が救われるかもしれませんね。
一方で、より大勢の人が気になるのは、「後天的に永久歯が失われた後、新しい歯(第3生歯)を生やせるのか」という疑問の答えでしょう。
これに対し、北野病院のサイトでは、今後行われる先天性無歯症治療薬の治験について、「第3生歯の研究とは異なる」と明記しています。
これらは「虫歯や抜歯、事故などで後天的に歯が無くなった人」に歯を生やす研究・治験でないのです。
しかし、がっかりする必要はありません。
高橋克氏らは、同じくUSAG-1タンパクをターゲットにした研究(2021年)で、人間と歯の数や種類が近いフェレットの前歯を6本から7本にするなど、既に動物で第3生歯を生やすことに成功しています。
研究チームは、第3生歯の再生を目指した研究も続けているのです。
そして高橋氏が述べるように、15~20年後には、永久歯を失った人に「入れ歯」や「インプラント」の他に、「歯生え薬を使って歯を生やす」という選択が可能になっているかもしれません。