「他人からどう思われるか」は無関係だった?
実験の結果、チームの予想通り、女性たちは他の参加者のカラオケ映像より、自分の歌っている映像を見ているときに赤面しやすいことが観察されました。
ところが脳内スキャンのデータを見ると、予想外の結果が見られています。
女性たちが赤面を起こしているときには、近年の研究で感情的興奮の処理と関連している「小脳」が活性化しており、さらに資格情報を処理する「視覚野」の活性化が確認されました。
これは彼女たちが自分自身のカラオケ歌唱の姿に細心の注意を払っていることを示しています。
その一方で、ダーウィンが指摘していたように、他人の感情や思考を推測し、理解しようとする働きに関わる脳領域には何の変化も見られなかったのです。
この結果からチームは、赤面が起こるプロセスには「他人がどう思っているか」を気にする脳活動は関係していない可能性が高いと述べました。
そうではなく、赤面は「自分で自分を認識する意識が過剰に働いている」ことが引き金になっていると考えられるようです。
顔が赤くなっているときに「他人がどう思っているか」を気にすることは確かにあります。
しかし、そこで気にしている「他人」というのは結局のところ、自分自身が勝手な基準で作りあげた他人(つまりは自分)であって、本当に「誰かがどう思っているか」を気にしているわけではないのではないでしょうか。
例えば、私たちが「自分の失態を誰かに見られた気がする」と思って赤面するとき、その「他人の視線」の正体は実は「自分の視線」であり、自分で自分を監視する意識が強まっているのかもしれません。
そうした自己認識の高まりが小脳の感情的興奮の刺激反応を起こし、顔が赤くなる現象につながるものと予想されます。
今後の課題
その一方で、チームは「この結果はまだ慎重に解釈するべきである」と述べています。
今回のような参加者の性別・年齢や赤面を誘導する条件が限定されている状態では、赤面に関わる脳の働きを完全に解明したとは言えません。
そこでチームは今後、幅広い年齢層や実験条件でのさらなる調査を進めたいと考えています。
それによって得られた知見は、赤面症に苦しむ方々の助けともなるかもしれません。