新種と判明!「らんま」と命名した理由は?
本調査では、研究室で継代飼育されていた個体群を対象に、顕微鏡を用いた形態観察とDNA配列の解析を実施。
その結果、この謎の甲殻類は既知の種のいずれにも該当しない特徴を持つことから学術的に未記載の新種であると断定されたのです。
そこでチームは本種の新たな学名として「アプセウデス・ランマ(Apseudes ranma、和名:ランマアプセウデス)」と命名しました。
この名前は高橋留美子氏の漫画『らんま1/2』のキャラクターである「早乙女乱馬」に由来するといいます。
その理由はアプセウデス・ランマが「雌雄同体(しゆうどうたい)」の特徴を持っていたことにあるという。
雌雄同体とは、一個体のうちにオスの生殖器官とメスの生殖器官の両方が存在する生物の特徴です。
『らんま1/2』を知っている方ならお分かりのとおり、早乙女乱馬は男性でありながら女性にもなるという稀有な能力を持っています。
乱馬は父親である玄馬と格闘の修行中に、中国の奥地にある呪われた泉に落ちたことで、水をかぶると女性になり、お湯をかぶると男性に戻るという体質になったのでした。
このように男女(雌雄)を兼ね備えている共通点から、原作者の高橋氏と作品の権利を持つ小学館に許可を得て、「ランマ」の学名を頂いたといいます。
また観察をする中で、ランマはハサミ型の脚の内側に、すり合わせて音を出す器官の「摩擦音器」と見られる構造を持っていることも明らかになりました。
そこにはデコボコしたコブ状の突起などが見られ、左右の脚を擦り合わせることで何らかの音を出している可能性が高いようです。
こうした摩擦音器は音を通じた仲間同士のコミュニケーションに使われていると指摘されていますが、まだ摩擦音器を実際に使っていると断定されたタナイス目は存在しません。
そこでチームは今後、飼育繁殖の容易なランマを対象にして、本当にデコボコ突起のあるハサミを「摩擦音器」として使っているのかどうか、確かめる予定です。
新種のランマは現時点で、名古屋港水族館と研究室の水槽内という限られた環境でしか見つかっていない故郷知れずの種です。
チームは本種のDNA配列の解析を通じて、故郷を明らかにしたいとも考えています。
ちなみに『らんま1/2』は今年10月から完全新作アニメが放送されることが決まっています。
今回の新種発見がそのいい景気づけになったかもしれません。